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見て、触れて、動く!マイコン、学習キット、ロボット―――盛り上がりを見せるプログラミング教育用ハードウェア

2020年2月11日、東京・池袋サンシャインシティにて、体験型エデュテイメントイベント「Go SOZO Tokyo 2020 Spring presented by Samsung」が開催された。

Go SOZO(ゴー ソーゾー)は、Go Visions 株式会社(代表:小助川将 )が主催する、プログラミングやロボット工作などが体験できる子ども向けイベント。

未就学児から中学生までの子どもを対象にしており、当日はEdTech関連企業からの出展による、プログラミングの学習コンテンツやアクティビティを体験できるさまざまなワークショップが開催された。

会場には4,500人以上が来場し、EdTech企業が展示するさまざまなツールや学習コンテンツに触れてプログラミングやロボット工作を学ぼうとする、多くの親子でにぎわっていた。

プログラミングでロボットを操作するワークショップ
プログラミングで、車の知育玩具を床に貼られたテープ上に走らせようと挑戦する子ども
さまざまEdTech関連企業が展示しているコンテンツを通して、子どもがプログラミングやロボット操作を体験する

また、会場内のイベントホールにて、プログラミングスクールに通う小学生の子どもたちがプログラミングで作ったゲームやロボットを披露する、プレゼン大会が開催された。

大会審査員には、今井翔太氏(EPIC GAMES JAPANコミュニティマネージャー)、犬飼敏貴氏(Google ストラテジックパートナーリード、元 株式会社FiNC Technologies CPO)、長谷川克也氏(宇宙航空研究開発機構(JAXA)研究員)と、第一線のグローバルIT企業や研究機関で活躍する3名が招致され、小学生たちの作品とプレゼンを審査した。

左から、長谷川克也氏(宇宙航空研究開発機構(JAXA)研究員)、今井翔太氏(EPIC GAMES JAPANコミュニティマネージャー)、犬飼敏貴氏(Google ストラテジックパートナーリード)

当記事では、大会審査員に表彰された3人の小学生たちのプレゼンの模様をお伝えし、プログラミング教育用の学習キットやロボットなど、さまざまなハードウェアの盛り上がりもレポートしたい。

人気ゲームをプログラミングで再現する

まず紹介するのは埼玉県のプログラミングスクール「浦和マイクラ部」に通うフジイショウタさん。

当イベントの参加費を集めるために、クラウドファンディングを活用して支援金を募ったという。

フジイショウタさん

浦和マイクラ部は、Minecraftのゲーム内の建築を通して、プログラミングを学習するサークル。

今回のプレゼンでは、フジイさんがサークルの仲間と開発した、人気ゲーム「スプラトゥーン」をMinecraftで再現した作品が紹介された。

Minecraftのゲーム内で再現されたスプラトゥーンのワールド
スプラトゥーンの特徴であるインクを撃ち合うアクションシューティングも「バトル」としてゲーム内で再現されている

フジイさんは、Microsoftのプログラミング環境「MakeCode」で、このスプラトゥーン再現ゲームを開発した。

ゲーム内にはブキ屋、ぼうし屋、くつ屋などのショップがあり、フジイさんがオリジナルでデザインしたアイテムがポイントで購入できる。

また、バトルのステージでは、制限時間を知らせるタイマー、特殊な武器に変更できる「スペシャルウェポン」機能、派手な爆撃の演出など、プレイヤーがゲームを楽しんでもらえるように、フジイさんがプログラミングでさまざまな仕掛けを設定している。

「MakeCodeとコマンドを使い分けたり、連携させたりしながらプログラミングを進めて大変でしたが、ちゃんと機能するゲームが完成してよかったです」とフジイさんは開発工程のエピソードを語った。

MakeCodeはビジュアルプログラミングが基本だが、JavaScriptのテキストプログラミングもできる

フジイさんの作品を表彰したのは、ゲーム「フォートナイト」を開発提供するEPIC GAMES JAPANの今井翔太氏だ。

今井氏は「まず、Minecraftで、スプラトゥーン特有のインクを撃ち合う陣取り合戦もきれいに再現されている点が評価できる。そしてタイマーやスペシャルウェポン機能など、ユーザーがゲームを楽しめることを意識したゲームデザインも施されている点が非常にすばらしい」とフジイさんの作品を評価した。

遊べるだけでなく社会課題も考えさせる農業シミュレーションゲーム

次に紹介するのは、「KodoLabo」に通う桒原花凛(クワハラカリン)さんが開発した「農業体験ゲーム」だ。

桒原花凛(クワハラカリン)さん

「農業に関わる人は年々減っているので、ゲームを通して農作業を体験して、農業に関心を持つ人を増やすことができたらいいな、という思いから開発しました」と桒原さんは開発意図を語った。

ゲームは種まきや水やりなどの農作業の操作をして野菜を収穫する、といった流れでプレイする。

収穫のシーン。野菜やキャラクターのイラストは桒原さんが作成している

ゲームはScratchでプログラミングしており、ゲームに登場するイラストも桒原さんが作成した。イラストは画質のあらさが目立つビットマップではなく、ベクター形式のファイルにする工夫を施してある。

Microsoftが提供するmicro:bitをじょうろに付けて、水やりの操作ができるようにした

また、農作業の大変さ、そして楽しさをユーザーに実感してもらえるように、体を動かしながらゲーム内の操作ができる工夫も施されている。

水やりの際に使うじょうろに、傾きを検知する加速度センサー機能を備えるmicro:bitを搭載して、じょうろを傾ける動作によって水やりの操作をできるように設定したのだ。

このじょうろを「水やりコントローラー」にするためのプログラミングも桒原さんが実装した。

桒原さんが今回のゲーム制作で学んだポイント

今回のゲーム制作を振り返ってのまとめでは、桒原さんが学んだポイントを紹介された。

プログラミングをしていると同じコードをひんぱんに書かないといけない場面があるので、クローンを有効活用して効率よくコーディングする、といった学びのポイントを挙げた。

またプログラミング面に関してだけでなく、ユーザーが順序通りにゲームを進めてくれるように誘導させるメッセージの表示方法や、見栄えをよくするためにベクター形式のイラストを作成したことなど、デザイン面に関する学びのポイントも紹介された。

桒原さんの作品を表彰したのは、現在Googleに勤める犬飼敏貴氏だ。

遊んで楽しむだけなく社会課題について考えさせるテーマをゲームの主軸においた着眼点や、また最後のゲーム制作で学んだポイントに関するプレゼンも要点がきれいまとまっていた点を、評価の理由として説明した。

高い実用性で評価されたオートロックのハードウェア

最後に紹介する作品は、桒原さんと同じくKodoLaboに通う小川琥太朗(オガワコタロウ)さんの「手作りオートロックVer2」だ。

作品タイトルの通り、センサーによって自動で鍵をかけてくれるハードウェアで、昨年9月に開催された「Go SOZO Tokyo 2019 Summer」で小川さんがプレゼンした作品のバージョンアップ版だ。

小川琥太朗さん

「鍵の閉め忘れをプログラミングで解決できないかな」と、思いつきが作品開発のきっかけだったという。

前回発表した「手作りオートロック」は、赤外線センサーでドアが閉まっているかどうかを検知して、モーターで鍵をかけるしくみだった。

前回のオートロックのしくみ

今回はさらに「専用の鍵で開けられる」機能をプログラミングで追加した。

バージョンアップさせた「手作りオートロックVer2」

今回の作品は、前回と同じくソニー・グローバルエデュケーションが展開するKOOVで開発。

鍵穴に搭載した赤外線センサーが専用の鍵を通したときオンとなるしくみにしてあり、赤外線を検知するとロックが外れるコードも小川さんがプログラミングした。

オートロックのプログラム

ただ、プログラミングしてすぐ鍵ロックの動作に成功したわけではなく、実際に専用の鍵に反応してロックが外れるようになるまで何度も調整テストを行った。

また、前回のプレゼンで審査員から指摘されたフィードバックを反映して、不審者が近づくと音がなる防犯ブザー、リモコンによって開錠する鍵穴のシャッターなど、多くの機能を追加した。

小川さんは、今後の目標として「モーターや赤外線のしくみはわかってきたので、今後はサーボモーターのことを学んでロボット掃除機を作りたいです」とさらなる開発意欲を語った。

小川さんの作品を表彰したのは、JAXAで宇宙科学の研究に取り組む長谷川克也氏だ。

しっかりと動作するハードウェアを作ったことを評価しつつ、「今回のプログラミングや工作を通して理解したことだけで満足せず、別の課題を自発的に見つけて次の開発に取り組もうとする姿勢がすばらしい。また、ロケットなどの宇宙開発もそうだが、ものづくりは失敗の連続で、作ったプロダクトがちゃんと動くかどうかは何回もテストしないといけない。実際にオートロックがうまく動くまで何度も挑戦を重ねた姿勢も大変よかった」と小川さんの開発に対する姿勢を評価した。

盛り上がりを見せるプログラミング教育用ハードウェア

以上、Go SOZO Tokyo 2020 Springの模様の一部をお伝えした。

プレゼン大会に登壇した子どもたちが使用していたmicro:bitやKOOV以外にも、会場にはアメリカのlittlezBitsや、老舗ホビーメーカー株式会社タミヤのプログラミング工作キットなど、多くのプログラミング教育用ハードウェアが展示されていた。

これらのプログラミング教育用ハードウェアはプログラミングによって実際に目の前で動作するので、モニター上の線やグラフィックのモーションよりも、子どもたちが「自分がプログラミングで操作できている」という実感が得やすい。

多種多様なハードウェアがあり、どれも子どもの学習意欲を刺激しようとするさまざまな工夫や仕掛けが施されている。

ただ、現状さまざまなメーカーからプログラミング教育用ハードウェアが開発されていて種類が多いので、教育関係者や子どもにプログラミングを教えたい保護者としては、どれを選べばよいか迷うかもしれない。

今回紹介したようなイベントの情報収集を第一にお奨めしたいが、文部科学省 未来の学びコンソーシアム事務局が運営する「小学校を中心としたプログラミング教育ポータル」では、プログラミング教育で実施されたさまざまなツールが検索できる。


盛り上がりを見せる、プログラミング教育用ハードウェア。

当メディアでも、日々新しく登場するさまざまなハードウェアの動向をお伝えしたい。

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