視覚に障害のある方へ講習する「形式」のポイント2~ICT活用の現場から⑰

視覚に障害のある方へ講習する「形式」のポイント2~ICT活用の現場から⑰

前回は視覚に障害のある方へ講習を行う際に、どういった形式で行うのがよいかについて説明した。

復習を兼ねて整理しておくと、形式は個別指導形式とセミナー形式の2つ。ポイントは「受講者の人数」によってどちらの形式で講習を行うのが適しているのかを考えることが大切だ。

基本的には視覚障害という特性に対して柔軟に対応できる個別指導形式が望ましい一方で、大人数の参加者に対してはセミナー形式で行うことが適切な場合もある。

今回はそれぞれの形式についての特徴やポイントについて取り上げたい。

個別ニーズに対応しやすい「個別指導形式」

1つ目の形式は「個別指導形式」。

マンツーマン(1対1)もしくは2~3人の少人数を対象にした講習の形式だ。

少人数の利を活かして受講者の細かいニーズに対応しやすく、時に受講者の手をとって操作方法を一緒に行うなどの個別対応も行えるため、受講者の満足度も高いのが特徴と言える。とくにマンツーマンではじっくりと受講者に向き合えるため、何に困っているのか、操作がうまくいかないときはどこに原因があるのかなどを確認しやすい。

2~3人を対象にした場合は、マンツーマン対応をローテーションして行う。

たとえば最初に全員に対して共通の説明(iPadの概要や基本的な操作方法など)を行ったあと、Aさんにマンツーマン対応を行い、一段落したところでBさんへのマンツーマン対応に移行。また一段落したらCさんへ……といった具合に、個別対応を回していくのだ。

繰り返しになるが個別指導形式のメリットは、受講者一人ひとりに向き合えるため、それぞれの要望や課題に対応しやすいことだ。ただしどれだけ対応できるかは教える側の知識や教え方によるところも大きい。

逆に言えばあらかじめ決まったカリキュラムを用意するのではなく、受講者からの質問や要望に応じて教える内容を柔軟に変更できる。

事前に説明する内容を決めてしまうと、受講者によっては「それはもう知っている内容だから聞いても仕方がない」という場合も出てくる。個別指導形式ならこうしたギャップを埋めつつ説明できるのだ。

一方で個別指導形式のデメリットは、受講者の人数が多い場合には向いていないことだ。前回も書いたように、マンツーマン対応を行っているとどうしても一人に占める時間が長くなってしまうため、受講人数が多いと十分に説明を受けられないまま終わってしまうという可能性が出てくる。

受講人数が多い場合に適しているのが、次に説明する「セミナー形式」だ。

大人数の受講者に対応しやすい「セミナー形式」

セミナー形式では、事前にある程度決めた内容を講習する。そのため基本的には受講者全員に同じ内容を受講してもらう。

セミナー形式のメリットはなんと言っても受講人数が多い場合に有効なことだ。全員が同じ内容を聞き、同じ操作方法を同時に行うため、講師は全員の様子に目を配りやすくなる。

前回書いたように、会場によっては「めったにない機会だから」と、多くの受講希望者が殺到する講習会もある。そうした場合、少数のニーズに100%応えることは難しくても、全員が60~80%くらいの満足度を得られるような講習会にすることが必要な場合もあると思う。このバランスは主催者と一緒に講習会のコンセプトをよくよく確認した上で判断することが大切だ。

セミナー形式のポイントとして、ある程度障害の種類を区分けしておくとよい場合がある。全盲の方と弱視の方とでは使用するアクセシビリティ機能やアプリにも違いがあるため、画一的な内容を行うセミナー形式では少し難しい場合もあるからだ。

とはいえ障害の種類が混合になった場合でもセミナー形式での講座は可能だ。実際のところ見え方には人それぞれ個性があり、「ほぼ全盲の弱視」の方もいれば「弱視だけど音声読み上げを主に使いたい」というニーズの方もいる。

障害の種類が混合になった場合のセミナー形式では、全体への説明と個別の説明を織り交ぜて対応する。たとえば前半は全員に共通する説明を行ったあと、後半の一部は主に全盲の方向けの内容を説明し、一部は弱視の方向けの内容を説明する。自身に関係のない説明の時には、前半で説明した内容を復習してもらうなどすることで、空白の時間を作らず学んでもらうよう工夫するといった方法だ。

セミナー形式のデメリットとして、受講者それぞれの細かいニーズには応えにくい場合がある。「Aさんは知らないけどBさんは知っている機能の使い方」といったギャップが出てくるのはやむを得ないところではある。

これを解決する方法は、講習会の合間や終わりに質問タイムを設けることだ。受講者から質問を受けつけることで足りなかった情報や説明の不足を補えれば、個別指導形式までとはいかないまでも満足度を上げることにつながるのではと思っている。

基本は受講者の満足に沿う講習を行うこと

個別指導形式とセミナー形式の2つについて紹介したが、大切なことは、講習に参加する当事者がその時抱えている課題について、解決もしくはそれにつながる手がかりを得られるかどうかだ。

そのために教える側が心がけるべきことは、できるだけ柔軟性を持っておくことだと思う。障害の種類や度合いは人それぞれであり、ニーズも個別に異なる。セミナー形式のような画一的な講習であっても、教える側はできるだけ相手に沿った教え方を臨機応変に行う努力をすることが大切だ。

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