これまで2回にわたり、視覚に障害のある方へ講習する際の形式について説明してきた。
個別ニーズに対応しやすい「個別指導形式」と、大人数に対応しやすい「セミナー形式」の2種類を例に挙げ、それぞれのメリットとデメリットを述べてきたが、今回は両方の形式に共通するポイントを紹介したい。
ちなみに今回は「視覚に障害のある方へiPadの使い方を講習する」と想定し、iPadの機能や設定に関わる点に重点を置いて説明していきたい。
また紹介するポイントの中には、視覚に障害のある方以外を対象とした講習でも配慮したいものも含まれているので、参考にしていただければ幸いだ。
会場のインターネット環境を確認
基本的なことだが、講習でiPadを快適に使うためにはインターネット環境が欠かせない。
もちろんインターネットを使わない内容に限定したiPad講習も可能だが(音声読み上げ機能のVoiceOverはインターネット接続なしでも使える)、Siriはインターネット接続が必要となる。
Siriは音声でiPadのさまざまな機能を利用できるため、とくに初心者ユーザがiPadを使う上で重要な機能の1つだ。
他にもiPadを活用するための多くのアプリには、インターネット接続が必要なものも多いため、講習の会場でiPadがインターネットに問題なく接続できるかを事前に確認しておくに越したことはない。
街中や多くの商業施設では無料でインターネットに接続できるサービスが広まってきたが、公共の施設では依然としてインターネット環境がない場合もある。その場合は無線ルータの持ち込みやスマートフォンのテザリング機能など、インターネット接続環境を構築できる機器の準備が必要になるだろう。
筆者も以前は携帯用の無線ルータを契約して使用していたが、現在ではiPhoneでテザリング機能で講習用のiPadをネット接続するようにしている。
ここで気をつけておきたいのは、携帯用の無線ルータやテザリングには、同時に接続できる台数に制限があることだ。
講習に使用するiPadの数が数台であれば1つのネット接続機器でも賄えるが、数が多くなるとネット接続できないiPadが出てきたり、回線速度が遅くなって講習がスムーズに進まなくなってしまう場合も出てくる。
iPad自体でインターネット接続ができるWi-Fi+Cellularモデルがあれば安心だが、ランニングコストのかからないWi-Fiモデルを使用する場合も多い。実際筆者が所有しているiPadはすべてWi-Fiモデルだ(県事業で使用している講座用iPadを除く)。
ホーム画面のアプリの並びを統一する
「セミナー形式」で大人数の受講者に説明する際、iPadのホーム画面に表示されているアプリの並び順が統一されていると、目的のアプリを見つけやすくなる。
講座用として用意したiPadの場合、複数台あっても中にインストールされているアプリが同じであれば、アプリの並び順を統一できる簡単な方法がある。
「設定」アプリからメニュー「一般」→「リセット」→「ホーム画面のレイアウトをリセット」で、ホーム画面のアプリの並びをデフォルトに戻すことができる。
iPadの操作説明などでアプリの配置を変えた場合でも、この方法ですぐ元に戻すことができるので便利だ。
音声読み上げするホームページは、シンプルなページから試す
PCユーザの場合、最初に開くホームページといえばYahoo! JAPANという方も多いだろう。しかし視覚障害、とくに全盲の方がiPadの音声読み上げ機能を使っていきなりYahoo! JAPANを使うのはお勧めはしない。
iPadで閲覧するYahoo! JAPANは基本的にPCのブラウザで表示するのと同じレイアウトで表示されるのだが、テキストの情報量が多くレイアウトも3段に分かれているため、音声読み上げ機能では内容を把握することがかなり難しいためだ。
そのため最初はレイアウト分けがされていない、平文のみが記載されたようなシンプルなホームページから練習していくと良いだろう。
驚くことにインターネットの中には、全盲の方が自身で作り更新しているホームページもある。そうしたホームページは当事者視点で作られているので、音声読み上げ機能だけでも比較的内容が理解しやすいはずだ。
ちなみに同じYahoo! JAPANでも、iPhoneでアクセスした場合はスマートフォン用のシンプルなレイアウトで表示される。音声で読み上げられる箇所もシンプルになるため、Yahoo! JAPANを音声読み上げ機能で利用したい場合は、iPadよりもiPhoneでアクセスすることをお勧めする。