GIGAスクール構想とは
GIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想とは、2019年12月に文部科学省が発表した、子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現に向けて、令和時代のスタンダードとしての1人1台端末環境と、高速大容量の通信ネットワーク、パブリッククラウド等を一体的に整備するための指針で、具体的な内容が盛り込まれている。2023年までに小中学全学年で達成するために、1台あたり4.5万円を補助、構内LAN工事を行うなどの具体的な施策や、端末・システムの要件を公開している。
GIGAスクール構想の実現について
https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_00001.htm
2020年に入り、民間企業の多くが、その高層実現に向けた製品やサービスの提供、また、学校関係者との取り組みを進めている。今回紹介する日本マイクロソフト株式会社もその1つだ。
「渋谷区モデル」へ導入が決まったSurface Go 2
日本マイクロソフトは、GIGAスクール構想の実現に向け、早くから取り組み、さまざまな発表を行っている。まず、2020年2月4日には、パートナー8社と協力し、「GIGA スクールパッケージ」と名付けた、GIGAスクール構想における学習者向けのICT環境をパッケージにした製品群を発表した。

このパッケージには、パートナー各社のPC(端末)、日本マイクロソフトが提供するソフトウェア(Windows、Office 365)、さらに、クラウドストレージ環境など、教育において必要となる要素が盛り込まれているものだ。とくに注目したいのは、生徒や教員個人を対象とせず、“教育”全体を対象に、MDM(Mobile Device Management)による大規模な端末展開とアカウント管理手法の提供やGIGAスクールパッケージを活用した教育研修の無償提供が含まれている点。
そして、3ヵ月が経ち、5月13日には、渋谷区が2019年7月に発表した教育環境「渋谷区モデル」のアップデートとして、渋谷区立小中学校すべての児童生徒を対象に、G同社のデバイス「Surface Go 2」1万2,500台が導入されたことが発表された。Surface Go 2は、日本マイクロソフトのGIGAスクール構想への取り組みに対する応用パッケージに含まれるものとして発表されたもの。

ここでは、Surface Go 2の詳細な仕様紹介は省略するが、これからの授業のデジタル化に対し、Surface Go 2は、デジタル教材に対応したパフォーマンスに加えて、ペン描画や高精細の両側カメラを備えており、GIGAスクール構想の実現が、さらに促進していくことが見込まれている。
2020年5月26日、日本マイクロソフトは、GIGAスクール基本パッケージを対象とした無償研修などを含む新しいプログラムとして「Microsoft GIGA Start Program」を発表した。詳しくは以下URLを参照のこと(2020年5月26日追記)。
https://www.microsoft.com/ja-jp/biz/education/default.aspx#primaryR11
この発表に際して、渋谷区副区長(CIO/CISO)澤田伸氏は、「私たちは、“渋谷区長期基本計画”の教育分野において“学校教育の充実”を1のテーマとして掲げ、情報化が加速度的に進む社会において、さまざまなICTツールを子供たちが安全に正しく使いこなすため国内トップクラスの教育ICT環境整備を進めてきました。新型コロナウィルス感染症の影響が中期化する脅威の下で、子供たちの学びが後退してしまうことが懸念されていますが、最先端の学習者用端末であるSurface Go 2とMicrosoft 365を組み合わせることにより、どんな状況においても充実した教育を子供たちが受けられる環境が実現されることを期待します」と、昨年から進められていたGIGAスクール構想、さらに、今の新型コロナウィルス騒動における教育現場の対応に対し、今回のSurface Go 2一括導入が1つの鍵を握る、とコメントした。
他にも、先日取り上げた「オンライン教育・ICT機器導入整備の最前線~渋谷区教育委員会インタビュー」でも紹介したように、渋谷区は日本国内でも積極的に教育のICT化を、具体的に進めている自治体の1つであり、そこには、今回紹介する日本マイクロソフトをはじめ、民間企業の協力を積極的に取り入れていることが特徴である。
ウィズコロナ、アフターコロナにおけるGIGAスクール構想とこれからの教育
本メディアが立ち上がった2016年から、繰り返し伝えているように、教育のICT化は進み続けている。また、最近注目を集めている遠隔授業・オンライン授業を導入している教育現場も少なからず増えている。一方で、教育現場では、パソコンやソフトウェアなど生徒や教員のタッチポイントの部分に目が行きがちで、従来の教育スタイルとの違いやそれらにかかるさまざまなコストが足かせとなり、導入に二の足を踏んでしまっているケースを、筆者は何度も見かけたことがあった。
しかし、今回の新型コロナウィルスの蔓延は、人と人との接触や1つの場所に集まっての集合研修型といった、“従来型の教育”に対し、一石を投じるどころか、強制的にNOを突き付けた形となった。そのため、今まで二の足を踏んでいた方たちも、否応なしに一歩進まなければいけなくなるだろう。
2020年5月25日、ここ日本では、4月7日に発令された緊急事態宣言が解除された。しかし、これは、4月以前の日常に戻るわけではなく、ウィズコロナ、そして、アフターコロナの社会に進むスタートラインでもある。
言葉で言うほど簡単なことではないが、今回の新型コロナウィルス蔓延を1つの契機として、新しい教育の在り方を見直す時期と捉え、再構築、アップデートすることが、教育改革につながっていくのではないだろうか。また、冒頭でも紹介したとおり、GIGAスクール構想で目指している「令和時代のスタンダードとしての1人1台端末環境と、高速大容量の通信ネットワーク、パブリッククラウド等を一体的に整備する」という形は、まさに、ウィズコロナ、アフターコロナで目指すべく教育の姿に合致すると筆者は考える。
EducationTomorrowでは、今後もGIGAスクール構想はもちろん、先進的に教育改革に取り組む学校関係者や教育委員会、自治体の動き、民間企業の取り組みに注目し、積極的に取り上げ、多くの方に共有していく。もし、取材を希望する教育関係の読者の方がいれば、 info@edutmrrw.jp までメールを送っていただくか、EducationTomorrowのFacebookページから問い合わせてほしい。