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「Cygames presents Tech Kids “ONLINE” CAMP in MATSUDO」レポート~ウィズコロナ時代に最適なプログラミング教育スタイルの模索

7月23日~26日の4連休の間、小学生向けプログラミングワークショップ「Cygames presents Tech Kids “ONLINE” CAMP in MATSUDO」が開催された。
当ワークショップは、千葉県松戸市と株式会社CA Tech Kids、株式会社Cygamesとの協業で、テレワークツールZoomを使用しながらオンラインにて実施された。

Cygamesは「Tech Kids CAMP in MATSUDO」を2018年5月からスタート。
過去11回開催され、今回は初のオンライン開催となる。

応募者の中から抽選で選ばれた松戸市在住の小学校4~6年生が、Cygamesのゲームで実際に使用されたイラストなどを素材に、簡単なオリジナルゲーム作りに挑戦した。

ワークショップでは、1日2時間のセミナーを、4日間にわたって午前/午後/夕方と3つの時間帯ごとに実施。
各回、20名の小学生が参加した。

小学生たちが自宅からオンラインでゲーム制作プログラミングに取り組めるよう、CA Tech Kidsから参加者全員にノートPCが、また一部の希望者にはWi-Fiルーターが無償で貸し出された。

20名の小学生たちがZoomを使用しながら、同時にオンラインワークショップに参加した

ワークショップは以下のカリキュラムで進められた。

当ワークショップのカリキュラムを主に編成したのは、共同主催者であるCA Tech Kidsだ。
Cygamesと同じサイバーエージェントグループで、プログラミングとデザインスキルを学べる小学生向けプログラミングスクール「Tech Kids School」を2013年から運営・展開している。
Tech Kids Schoolでプログラミング教育に取り組むスタッフが講師、メンターとして、参加者である小学生たちのプログラミングをサポートしていた。

CA Tech Kidsや同じサイバーエージェントグループ企業のプログラミング教育事業は、当メディアでも以前紹介している。

当レポートでは、4日目、小学生たちのオリジナルゲーム開発の模様をお届けする。

子どもたちの自主的なプログラミングを促し、講師・メンターはサポートに徹する

ワークショップは、講師が必要な知識を小学生たちへ解説する、「講師→小学生」といった従来型の一方向な授業スタイルではない。

ワークショップ中は、小学生たちがそれぞれのペースで黙々とプログラミングに取り組みながら、わからないことがあった際に、講師やメンターを呼びかける。
講師やメンターは、小学生たちの呼びかけに応えてサポートに徹するスタイルで、ワークショップは進められた。

わからないことがある子どもは、Zoomの「手を挙げる」機能で講師やメンターを呼びかけ、プログラミングのアドバイスをもらう

さらにより細やかなサポートが必要になったときには、メンターがZoomミーティングルーム上に作成した個室「ブレイクアウトルーム」へ小学生を招待して、そのブレイクアウトルーム内で、小学生のパソコン画面を共有しながら、マンツーマンでプログラミングの指導をする。

メンターは小学生のプログラミングの様子を、Zoomの画面共有機能で確認しながら指導する
メンターが小学生の間違っているプログラミング箇所を指摘する場面。「どうすれば正しいプログラミングになるのか?」小学生自身に考えてもらいながら、ヒントを出していた

ときにはブレイクアウトルームでの個別指導も受け、小学生たちはゲーム制作を進める。

そして、オリジナルゲームを完成させた子どもたちは講師やメンターに作品を披露しながら、バグはないか、ゲームをよりおもしろくするにはどんな改善が必要か、チェックを受けてフィードバックをもらっていた。

小学生が開発した、キャラクターを迷路のゴールまで操作するゲーム。道中の壁や動き回る敵キャラクターにぶつかればスタート地点に戻されてしまったり、制限時間がなくなればゲームオーバーになってしまったりする。そんなゲームの仕様も、小学生自身がプログラミングで設定した

2時間のワークショップでは、小学生たちは終始自分のペースでゲーム制作を進めて、プログラミングの楽しさを実感していた様子であった。

当ワークショップのCygames、CA Tech Kids担当者インタビュー

筆者はワークショップの後、講師を務めた株式会社CA Tech Kids 社長室企画広報グループ 桑野悠一郎氏と株式会社Cygames 社長室 星野健一氏にインタビューを行い、今回のワークショップの狙いや手応えを聞き出した。

株式会社Cygames 社長室 星野健一氏(左)、株式会社CA Tech Kids 社長室企画広報グループ 桑野悠一郎氏(右)
―――昨今、多くのEdTech企業がプログラミング教育に参画していますが、Cygamesだからこそできるプログラミング教育の特長とは何でしょうか?

星野氏:
Cygamesのゲームで実際使われたグラフィックやサウンドのデータを、ゲーム制作の素材として提供していることです。
実際にリリースされているクオリティの高い素材を使用してゲーム制作してもらうと、子どもたちの反応もよいです。

子どもたちも、自分で作ったゲームのクオリティが高いと感じられるので、子どもたちの満足度アップにつながっていると思います。
結果的に子どもたちがプログラミングそのものに集中できることにもつながっているので、クオリティの高い素材を提供することは、当社だからこそできる特長と考えています。

―――今回のようなプログラミングワークショップを2018年から開催されていますが、CA Tech Kidsと協業している理由やメリットは何でしょうか?

星野氏:
2018年からプログラミング教育に携わってきましたが、当社はゲーム制作におけるプログラミングやデザインなど「ゲームを作るスキル、ノウハウ」は持っていますが、それらは「ゲーム制作を教えるスキル」とは違います。
同じサイバーエージェントグループということもあって、実際の子どもたちへの指導の大部分に関しては、プログラミング教育事業の実績を持つCA Tech Kidsに担ってもらっています。

CA Tech Kidsとワークショップ運営を行い感じますが、子どもたちのテンションを上げて場を盛り上げてくれる声がけや、子どもたちにプログラミングの達成感を味わってもらうための細やかなサポートは、コーチングのプロであるCA Tech Kidsのメンバーだからできることです。
指導の面は全面的にCA Tech Kidsに任せて、当社はハイクオリティな素材提供に専念できることがメリットと考えています。

――今回は初のオンライン開催とのことですが、今回のワークショップで得られたプログラミング教育における手応えや課題などがあればお教えください。

桑野氏:
手応えとしては、オンラインでも十分にワークショップの実施は可能と実感できたことです。

むしろ、これまでよりもカリキュラムの進捗が早かったので、子どもたちの習熟度・スピードに関しては、オフラインより今回のオンラインの方が上がったと感じています。
子どもたちが自宅で落ち着いて、パソコン画面に集中しながらプログラミングに取り組めることが影響しているのかもしれません。

課題としては、子どもたちとのコミュニケーションにやや難しさを感じた点です。

子どもたちのプログラミング進捗確認については、今回はブレイクアウトルーム内の画面共有で行いましたが、まだまだ運用面においては改善が必要だと考えています。

またこれまでは肩越しに子どもたちのパソコン画面を眺めて、気付いたことをすぐにアドバイスできたのが、オンラインだと難しくなりました。
対面であれば紙にメモ書きレベルでもプログラミング概念図を書きながら説明する、といったこともできましたが、オンラインの今回はそんな「何気ないコミュニケーション」が同様にはできず、教える難しさを感じます。
対策としては、子どもたちの理解を助けるようなスライド資料などを、事前にもっと細やかに準備することを検討しています。

星野氏:
課題については、私からも補足があります。

今回は、CA Tech Kidsから支給されたパソコンを参加者全員に貸し出して、ネットワーク環境も希望者にはWi-Fiルーターを無償で支給したので、環境の事前準備については十分な対応ができました。
オンラインでも、これまでと遜色ない内容のワークショップを開催できたと自負しています。

しかし、オンライン開催、と聞くと「準備も大変そうだし参加する敷居が上がってしまった」と感じて、参加自体を敬遠してしまう保護者の方が少なくないのではないか、という懸念を感じています。
必要機材・ネットワーク環境準備のハードルは各ご家庭によってバラつきがあるため、ご家庭への説明や周知なども含めて、環境準備のサポートについてはもっと考える必要性を感じています。

―――本日はありがとうございました。

拡大・普及が見込まれるオンライン型プログラミングイベント

以上、「Cygames presents Tech Kids “ONLINE” CAMP in MATSUDO」の模様をお届けした。

当ワークショップ主催者Cygames、CA Tech Kidsなどのサイバーエージェントグループは、今夏、他にも小中学校対象プログラミングイベントの実施を予定している。

またオンライン型プログラミングイベントは、COVID-19感染拡大がきっかけとなり、サイバーエージェントグループ以外にもさまざまなEdTech企業や自治体が連携しながら実施を予定しており、今後も広く普及・拡大し一般化していくことが予想される。

インタビュー中には桑野氏、星野氏が「対面だと何気なくできていたコミュニケーションが難しい」「必要機材やネットワーク環境の整備にサポートが必要」など、オンライン上のプログラミング教育における課題を指摘していたが、他の多くのEdTech企業も、現在はオンライン型プログラミングイベントの実施を通して、さまざまな課題を洗い出している段階であると思われる。

今後、見つけた課題に対して、EdTech企業がどのような対策を講じて改善を図っていくのかは、当メディアでも注目したい。

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