「ゲームエンジニアってどんな仕事?」「プログラミングって実際どのように使われてるの?」ミクシィのプログラミングサマーキャンプ2020レポート

「ゲームエンジニアってどんな仕事?」「プログラミングって実際どのように使われてるの?」ミクシィのプログラミングサマーキャンプ2020レポート

8月8日、株式会社ミクシィ(以下、ミクシィ)が主催する、おもに中学生を対象にしたオンラインプログラミングセミナー「ミクシィ社員に聞く!エンジニアへの道〜モンスト開発の舞台裏/特別プログラミング講座〜」が、YouTubeで、事前登録者向けに限定配信された。

当セミナーでは、ミクシィが展開するエンターテインメント事業ブランド「XFLAG」が開発する人気スマホゲームアプリ「モンスターストライク」現役エンジニアによる「モンスト開発の舞台裏」や、ミクシィのプログラミング教育支援担当チームによる「特別プログラミング講座」など、キャリア学習とプログラミング教育をテーマにした解説講座が配信された。

セミナーの司会と「特別プログラミング講座」の講師を務めたのは、田那辺輝氏(株式会社ミクシィ 開発本部CTO室)と町井香織氏(株式会社ミクシィ 経営企画部広報グループ)で、ミクシィのプログラミング教育支援の取り組みを行っている。

左:町井香織氏(株式会社ミクシィ 経営企画部広報グループ) 右:田那辺輝氏(株式会社ミクシィ 開発本部CTO室)

ミクシィのプログラミング教育支援の取り組みについては、当メディアでも報じている。

当記事では、セミナーの模様をお伝えするが、まずセミナー開催の背景について簡単に説明したい。

プログラミングサマーキャンプ2020とは

当セミナーは、今月8月に随時開催されているプログラミングイベント「Kids VALLEY 未来の学びプロジェクト presents プログラミングサマーキャンプ 2020(以下、プログラミングサマーキャンプ2020)」の、ミクシィ担当セッションとして、実施された。

プログラミングサマーキャンプ2020は、渋谷に拠点を構える東急株式会社、株式会社サイバーエージェント、株式会社ディー・エヌ・エー、 GMOインターネット株式会社、ミクシィの5社と渋谷区教育委員会が連携して、2019年6月に始動した「Kids VALLEY(キッズ バレー)未来の学びプロジェクト」の一環として開催されており、2019年に続いて2回目の開催だ。

今年のプログラミングサマーキャンプ2020では、Kids VALLEYプロジェクト参画5社に加えて、Googleもワークショップを実施しており、計6社がさまざまなテーマのプログラミングワークショップやセミナーなどを多く実施。
COVID-19感染拡大防止を理由に、大半のワークショップ、セミナーがオンラインで実施されているが、一部オフラインでもイベントが実施されている。

今夏、さまざまなEdTech企業がオンライン型プログラミングイベントを開催しているが、プログラミングサマーキャンプ2020は6社がそれぞれの強みを活かして渋谷区のみならず全国の小中学生を対象に実施しており、全国的にみても大規模なイベントだ。

モンスターストライク開発エンジニアによる「モンスト開発の舞台裏」

セミナーではまず、「モンスト開発の舞台裏」が配信され、モンスターストライク開発エンジニアから、中学生に向けたキャリア学習をテーマとして、ゲームエンジニアの職業像が解説された。

講師を務めたのは、モンスターストライク開発に携わる、モンスト事業本部 開発室の角龍徳氏。
アプリ内のゲームエフェクト(ゲーム上で表現されるグラフィックの挙動やサウンドの効果など)の実装を多く手掛けている。

モンスト事業本部 開発室 角龍徳氏

ゲームエンジニアの職業としての概要や、エンジニアになるために意識しておけばよいこと、そして実際に実装されたゲームエフェクトの開発事例まで、ゲームエンジニアの概要や開発の全体像が、初心者にもわかるようにやさしく解説された。

モンスターストライク上で多用されるゲームエフェクト「ストライクショット」(SS)の開発フロー。エンジニアだけではなく、企画チームやVFXチームなど、さまざまなチームメンバーが連携しながらSSを開発している
自身の体験をふまえながら、エンジニアになるために必要な素養や意識しておくべきことなどについて、角氏の考えも解説された

人気スマホゲームアプリがどんな工程で開発されていくのか、実際の開発事例を紹介しつつその様子がわかりやすく解説され、ゲーム開発に関心のある中学生にとっては、非常に興味を惹きつける内容であった。

ミクシィプログラミング教育支援担当者によるテキストプログラミング講座

続いて配信された「特別プログラミング講座」では、講師を務めた田那辺輝氏から、“プログラミングの基本的な考え方”に関する概観が解説された。

講座の目的や願いは、中学生たちがテキストプログラミングに対する余計な抵抗感を抱かず、積極的にプログラミングに取り組んでもらえるようになることだ。

講座では、プログラミング言語の一般的な要素・記法から、プログラミングが発展していく中で体系立てられた「オブジェクト指向型プログラミング」「構造化プログラミング」「イベント駆動型プログラミング」といったプログラミング手法など、専門用語に関する説明もあった。

だが、これまでプログラミング未経験の中学生とも対面してプログラミングの指導に取り組んできた田那辺氏から、専門用語は身近な言葉に置き換えながら、初心者にも「プログラミングの記法や手法が、どうしてそのようなしくみになっているのか?」といったことがイメージしやすいように解説された。

“プログラミングの基本的な考え方“に関する概観を解説するため、講座では「言語の基礎」「オブジェクト指向型プログラミング」「構造化プログラミング」「イベント駆動型プログラミング」と4つのテーマに分けて説明された。初心者には難解に感じる専門用語を身近な言葉に置き換えながら、やさしく解説された
プログラミング言語において基本的な「制御構造」のコード例。「条件分岐」や「繰り返し」などの処理がどのように行われているか、実際のコードを例に解説された
クラス、関数、モジュールなどを用いて、コードを整理する「構造化プログラミング」といったプログラミング手法も、実際のコード例と一緒に解説された

プロのITエンジニアたちがプログラミング言語のコードをどのように読んでいるのか、エンジニアたちの習慣やテクニックの一端を、講座ではプログラミングを知らない初心者にもイメージできるよう、わかりやすく解説された。

セミナー主催者に聞く、ミクシィの狙い

後日、筆者はミクシィに今回実施されたセミナーの狙いを引き出すため、セミナーを主催した田那辺氏と町井氏に、メール取材を行い、回答を得られたので紹介したい。

―――今回のセミナーの狙いや目的についてお聞かせください。

田那辺氏:
ミクシィではこれまでも、学生へのキャリア教育支援の一環で、IT企業への理解を深めるなど、さまざまな経験や知恵を身につけてもらいたい願いをこめて、企業訪問プログラムや学習イベントを提供してきました。
今年の弊社のプログラミングサマーキャンプではオンラインで開催することで、これまで参加できなかった方にも気軽に参加いただける機会になりました。
私たちが考える、エンジニアという仕事とプログラミングの面白み、そしてそこで働く人のワクワクした気持ちを感じ取っていただき、今後の選択肢に役立てていただきたいと考えています。

―――プログラミングサマーキャンプ2020に参加する他社のワークショップやセミナーでは、参加者自身にもプログラミングをしてもらう「プログラミング体験型」といった実施形式が多いのに対して、当セミナーでは、従来の「講義型」といった形式で実施されました。このような形式のセミナーとしたのには理由などはありますか?

田那辺氏:
セミナーの2つのコンテンツ、「お仕事説明&どうやってエンジニアになるの」「聞くプログラミング講座」はどちらも、いわゆる実践・ワークショップではなく講演や授業に近い形で実施しました。
その理由は、実際のプログラミング体験や個別指導は、弊社のプログラミング教育支援でもこれまで取り組んできており、今回のセミナーはそれらとは違う機会として、学生たちにプログラミングを使う仕事のイメージを感じ取ってもらいたいと考えたからです。
エンジニア職について、日頃行っていることや仕事への考えというものは、エンジニア本人からしか聞くことができません。弊社に在籍するエンジニアの「今」を切り取ってお伝えすることで、私たちミクシィらしさを感じていただけるのではと考えました。
その情報が刺激となって、学生の皆さんのこれからの過ごし方、感じ方によい影響を与えるきっかけになれば、という想いで企画しました。

―――多くの中学生たちにプログラミングの指導を行われてきたと思いますが、中学生が初めてプログラミングを学びだす際、何から始めたらよいとお考えでしょうか?

田那辺氏:
セミナーの最後に開いたQ&Aコーナーでも似た質問をいただいたんですが、まずプログラミングが「勉強」だと思わないで取り組んでほしいと考えています。
プログラミングは手段ですので、自分がプログラミングを使って達成してみたいゴール(たとえば「アプリを作りたい」「動くWebページを作りたい」など)を見つけて、ゴールに向けて簡単なことから取り組むのがよいと思います。
「〇〇言語で△△メソッドを学習しましょう」といった具体例を挙げた答えではなくてすみません。
しかし、ゴールが決まると今後何を学習すればよいのかが明確化されるので、達成しやすくなると思います。
また、ゴールを達成するのに必要な知識が明確になることは、どこかのプログラミング学習コースを選ぶ場合にもより有益になると思います。

―――今回のセミナーを実施して得られた手応えをお教えください。

町井氏:
手応えとしては、セミナーの視聴者から積極的にコメント欄に質問などを投稿していただいて、プログラミングに対する興味や熱意をとても感じました。
オンラインで双方向コミュニケーションができたと実感しており、今後もこのようなオンラインイベントを実施していき、より多くの人にプログラミングの楽しさを伝えていく機会を創出していきたいと考えています。

―――取材へのご対応、ありがとうございました。

多様化するオンライン型プログラミング教育イベント

以上、「ミクシィ社員に聞く!エンジニアへの道〜モンスト開発の舞台裏/特別プログラミング講座〜」の模様をお届けした。

今回のセミナーは、ミクシィ現役エンジニアによる人気スマホゲーム開発事例解説、プロのITエンジニアたちが使う習慣やテクニックの一端も教えるテキストプログラミング講座と、最近よくある初学者向けの体験型プログラミングイベントと比較すれば、教えられるプログラミング知識の難易度はやや高めの印象を受けた。

しかし、おもな対象者を中学生に絞り、キャリア教育支援にも重点を置いていたことから、やや高めの難易度に設定しても、十分セミナーは実施可能とミクシィは判断したのだろう。

結果的に、セミナー参加者である中学生たちにとっても、他のEdTech企業などが開催しているプログラミングイベントとは異なる体験ができるセミナーになっていたように思える。

昨今、COVID-19感染拡大が影響してオンライン型プログラミングイベントは増加しているが、実施形式やイベントで解説される内容はさまざまで、開催する各企業によって工夫がある。

子どもに対してプログラミングをわかりやすく伝えるためにはどうすればよいか?模索しながらもプログラミング教育支援を続けるミクシィの努力の様子が窺い知れた。

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