国内最大規模 中高生向けプログラミング教育サービス「Life is Tech ! 」インタビュー【後編】サービス開発裏側に迫る

国内最大規模 中高生向けプログラミング教育サービス「Life is Tech ! 」インタビュー【後編】サービス開発裏側に迫る

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、今年4月に発令された緊急事態宣言以降、多く学校の教育現場で、従来の教育スタイルの変革が強いられた。

GIGAスクール構想実現が加速化された影響もあり、学校教育現場へのデジタル機器、ICT教育支援ツールの普及が推進され、教材や授業スタイルのデジタル化、オンライン化が、今もなお続いている。

そして2020年度より小学校で必修化されたプログラミング教育もあいまって、教育現場の教師たちにはITリテラシー習得の必要性が高まっている。

当メディアでも、激変する教育現場の人々をサポートするEdTech企業や自治体によるさまざまな支援・取り組みをこれまで紹介してきた。

今回の記事では、2010年という早い段階からプログラミング教育事業をスタートさせ、現在もおもに中学生・高校生向けIT・プログラミング教育サービス「Life is Tech ! 」を展開するライフイズテック株式会社の取り組みを、前後編に分けて紹介したい。

Life is Tech ! のIT・プログラミングキャンプとスクールでは、これまでのべ52,000人が参加し、国内最大規模となる。

ライフイズテック株式会社の丸本徳之氏(執行役員 事業開発Div 事業部長)、金澤直毅氏(カリキュラム本部 本部長)にオンラインインタビューを行い、「Life is Tech ! 」の概要、現在展開しているプログラミング教材「ライフイズテックレッスン」の詳細、そしてサービスの開発裏側などをヒアリングしたので、その模様をお送りする。

ライフイズテック株式会社 執行役員 事業開発Div 事業部長 丸本徳之氏。キャンプやスクールなどのサービスを統括する。
ライフイズテック株式会社 カリキュラム本部 本部長 金澤直毅氏。デザインを含めた、カリキュラム・教材の設計・制作に従事する。

後編では、ライフイズテックが展開するサービスの開発裏側などを紹介する。

プログラミング初学者に配慮したUI/UX

HTML入力欄

金澤氏:
ライフイズテックレッスンの問題では、HTMLなどソースコードの入力画面にも工夫があります。

レッスン中の画面にはオレンジ色の枠で囲まれた背景が黒の「HTML」入力欄がありますが、本来Webサイトを制作するときには、問題で入力するコード以外にもさまざまなタグが存在していて表示されるはずです。
しかし、当教材では、それら周辺のコードは「おまじないのコード」と呼び、レッスン中の入力時には省略しています。

はじめてプログラミングを学ぶ際には、レッスン中の問題を解くのに必要なHTMLタグや基本的なスタイルシートだけを選んで表示、入力させるようにしています。

実際に、生徒に最後Webサイトを発表させるまでには、その「おまじないのコード」の必要性はしっかり教えますが、はじめてプログラミングに触れる初期段階で「おまじないのコード」まで書かせる問題設計にすると、プログラミングのことを難しくて嫌だ、と感じてしまう生徒がでてきます。
そのため、あえて、そういった細かい実装部分は隠す工夫を施しています。

―――教材を作成される際に参考にされた資料やガイダンスなどはあったんでしょうか?

金澤氏:
今回のレッスンは私がすべて作成しました。

作成する際は、数十冊以上のプログラミング関連書籍や、YouTubeやUdemyなど動画教材を参考にしました。

あとはW3Cの公式リファレンスも参考にしています。
W3Cで公開している、すべてのHTMLタグとスタイルシートのプロパティを数千以上リストアップして、どれを教えてどれは教えないのかを選別しました。
さらに選りすぐった50個ぐらいの学習要素をマッピングする形式で作っています。

一見、途方もない作業と思われるかもしれないんですが、英語や数学といった一般教科の方が、必要な知識を網羅しようと思ったら際限がなく、大変と思います。
幸い、ITテクノロジーに関する知識は、あらかじめ考えられて仕様が策定されているので、一般教科に比べたら学習項目は少ないと思っています。

必要な知識量が少ない割には、知識、要素をつなぎ合わせて活用することで、簡単にWebページの見た目をおもしろくできます。
さらに画像やメディアファイルと連携すれば、実用的でデザイン面でも優れたWebサイトにできます。

私はもともとWebデザインを仕事にしていたので、そのWebデザインの知識も活かしながら、教材のカリキュラムを作りました。

―――Webデザインとなると、色彩デザインなども教える範疇になると思いますが、色覚障害の方への配慮など、アクセシビリティの観点に配慮したUI/UXにはされているのでしょうか?

金澤氏:
はい、アクセシビリティには対応・配慮して教材を作成しています。

当教材では「パン屋」をテーマにしているので、パン屋のイメージに合った色彩デザインを施していますが、写真は白黒の状態でも情報が伝わるような写真を選んでいます。

また、目立たせたい情報は表示サイズを大きくしたり、明暗などのコントラストをつけたりしてバランスのデザイン原則を活用して表示しています。

そうやって、色には頼らない情報設計でUI/UXのデザインをしています。

生徒ひとりひとりの学習進捗を確認する機能

画面右端の学習進捗を表すチェックマーク
―――問題を解いていくと、画面右側のチェックマークが増えていきますが、この学習進捗は、先生など教育機関側は確認できますか?

丸本氏:
はい、先生はすべての生徒の学習進捗を確認できます。

生徒ひとりひとりの学習進捗の早い・遅いといった状況確認もできますが、学習進捗が止まっている生徒の様子を確認して、個別の声がけやアドバイスがしやすくなることが大きなメリットと考えています。

あとは、とにかく進捗が早くてちゃんと理解してるような生徒がいたら、生徒皆の前で褒めてあげたり、先生と一緒に生徒をフォローする「ミニ先生」といった役割を担わせたりすることもできます。

単なる学習進捗の確認だけでなく、授業のスタイル自体を変えられるツールとしても、活用が見込める機能です。

そして、やはり最近はコロナショックの影響もあり、ネットワークを介して生徒の進捗が分かるツールは重宝されています。

オンライン学習によってよい効果が生まれた学習スタイルは、平時の対面授業のときでも十分活用できます。

生徒が目の前にいる対面授業でも、本人の進捗が手元で把握できて進捗が止まっている生徒を見つければ、話しかけにフォローができます。

コロナショックによる影響は

―――御社の取り組みにおいては、コロナショックによってどのような変化や影響がありましたか?

丸本氏:
さまざまな面で変化がありました。

当社全体のセールスのあり方にも変化はありましたし、当社サービスを導入いただいている学校の教育スタイルにも変化がありました。

緊急事態宣言が始まったときには、複数の私立校へ、Zoomの使い方など初歩的なITツールの導入支援も含めて、オンライン授業のサポートをしました。
それらの学校へ緊急事態宣言解除後にもヒアリングすると、オンライン教育ツールの活用を継続している、という声をいただいています。

当教材の学習進捗管理機能の活用も続けていただいていますが、Zoomでの授業動画を録画して復習や振り返りに使用されたり、小テストの採点にGoogle Formを使用されたり、支援したITツールの活用を続けている先生はいらっしゃいます。
「ITツールを活用することで授業の準備や復習に時間を割けることにつながり、もっと授業でさまざまな取り組みを検討できる」とおっしゃる先生もいて、印象的でした。

コロナショックによって、教育現場におけるITツールの活用が進んだ、といったことはすごく大きな変化かと感じています。

ライフイズテックレッスンを支えるクラウドサービス「AWS」

―――御社のサービスは、EdTech導入補助金制度をご利用されているそうですね。EdTech導入補助金はクラウドサービスが対象ということですが、御社のサービスはどんなクラウドサービスを利用されているのでしょうか?

丸本氏:
はい、ライフイズテックレッスンでは、EdTech導入補助金制度は活用して、約600校の学校からお申込みいただきました。
しかしこれは、かなり多くの教育機関がオンライン学習の環境整備に苦慮されている、といった事態の裏返しかもしれません。

また、当社ではAWSを採用して、サービスを提供しています。

一般的に、Webサイト制作をするときには、コーディングするためのテキストエディタをパソコンにダウンロードする必要があります。
しかし、学校のIT環境は、規定が細かく、セキュリティの問題もあって、ソフトウェアを自由にダウンロードすることが難しい、という実状があります。
テキストエディタをダウンロードできる学校もありますが、なかなかスムーズに取り入れることが難しい学校も多いです。

ライフイズテックレッスンでは、「AWS Cloud9」というクラウドベースの統合開発環境(IDE)を採用して、すべてブラウザベースでテキストコーディングできるようにしました。

学校の制約の多い難しい環境下でも、当教材の自由度を高められたのは、AWS Cloud9によって実現できた面が大きいです。

また、現在推進されているGIGAスクール構想では、コスト削減やセキュアなICT教育環境構築などを目指して、「クラウド・バイ・デフォルトの原則」が掲げられています。

セキュリティ上の問題も含めて、当社がクラウド上で自由度の高いさまざまなサービスを提供できるようになったのは、AWSによる影響が大きい考えています。

AWSを活用した新コース~Python・AIコース

丸本氏:
他にAWSによって実現できたサービスとしては、高校向け教材「Python・AIコース」があり、来春展開予定です。

2022年の新学習指導要領にも対応していますが、この改訂により、高校情報科ではコンピュータサイエンスやプログラミングをより深く学ぶ内容になります。
必修科目「情報Ⅰ」の全単元に対応した上で、Pythonを活用した初歩的なAIリテラシーを当コースで学べます。

このコースでは「Amazon Rekognition」というサービスを利用して開発しています。

Amazon Rekognitionでは、すでに機械学習によって学習済みのモデルが豊富に用意されているので、開発するアプリケーションに画像分析・動画分析機能を簡単に追加できます。

たとえば、生徒が写真のデータを、当コースのアプリケーションへ投稿すると、その写真の情報を文字情報として変換して返してくれます。
その文字情報を活用して、教室内にいる生徒全員の写真を投稿することでクラスの出欠確認を自動で済ます機能を生徒が作ることができます。
他には、受験に必要な証明写真を撮るときに活用できる「笑顔度」判定機能などもあり、この機能を利用してまた別のプロダクトを作ることもできます。

これらの機械学習、いわゆるAIによって活用できる機能を、Pythonプログラミングを使用してよりおもしろいプロダクトにするための学習をする、といったコース内容です。

かなり難しい内容を教えるように感じられるかもしれませんが、AWS Rekognitionですでにたくさんの学習済みのモデルが用意されているので、生徒が学ぶ内容は機能改善を目的にしたPythonプログラミングが中心です。

「AI企画力」~AIを利用してどうやって問題解決するか?

丸本氏:
当コースは、AIでできることはプログラミングでどのように構築されているのか?といった大まかなイメージが掴めるカリキュラム設定にしており、「AIを使えば自分たちの生活が豊かになる」という学習体験を提供することを目的にしています。

今でも、先生や保護者の中には「AIによって人の仕事が奪われる」という恐怖の文脈で、AIについて語る方がいらっしゃいます。

ただ、当コースでは「AIを利用してどうやって問題解決するか?」というテーマを学習の主軸においています。
当社では、プログラミングを活用しながらAIでできる問題解決を目指す発想を「AI企画力」と呼び、当コースで中高生たちのAI企画力を育むことを目指しています。

ライフイズテックが追求する「ものづくりの本質的な楽しさ」

金澤氏:
当社のサービスでは、今後も重要性が高まるプログラミングスキルを幅広く、効果的に学ぶことができますが、実用的なメリットばかりが習得できるわけではありません。

当社では、従来から展開していたキャンプやスクールなどの対面型ワークショップを通して、これまで5万人以上の方に、プログラミングはもちろん、デザインや映像制作など、ものづくりのスキルを教えてきました。

それらのものづくり全般には、共通した性質があると考えています。

それは、ものを作るということは本質的には楽しいことで、学びは副次的につながること、といった性質です。

プログラミングやデザインなどが備えるものづくりの楽しさを伝えて学びも深めていく、そんな良質な教材を今後も提供していきたい、と考えています。

―――本日はありがとうございました。

豊富なノウハウを活かした良質な教材やAWSを採用したモダンなクラウドサービス開発体制

以上、ライフイズテックレッスン株式会社の丸本徳之氏、金澤直毅氏のオンラインインタビューの模様をお届けした。

ライフイズテックでは、プログラミング教育事業を2010年という早期からスタートしただけあり、蓄積された教育上のノウハウが豊富で、それらを積極的に教材作成に活かしている様子であった。

そして学校の教育現場へのフォローにもしっかりと注力している印象で、プログラミング教育に悩む中学・高校の教師を、今後も強力にサポートしていくだろう。

またAWSを採用したモダンなクラウドサービスは、基本的にインターネット環境とブラウザがあれば、どんな環境でも同じサービスを安定して提供できる。

インタビュー中、丸本氏も指摘していたように、学校のICT環境は、その整備・普及の状況が自治体や学校によって差があり、全国一律のオンプレミス環境を整備・統一するのは難しい。

そんな制約の多い学校のICT環境にとっては、クラウドを用いたサービスの開発・提供が、多くの課題改善に大きく寄与すると思われる。

ライフイズテックの先端的な取り組み、そしてそれを支えるクラウドサービスの重要性が伝わるインタビューであったと感じた。

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