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「TechAcademyジュニア」による渋谷区立長谷戸小学校でのプログラミング特別授業レポート

12月15日、東京都の渋谷区立長谷戸小学校にて、キラメックス株式会社が運営する小中高校生向けプログラミングスクール「TechAcademyジュニア」(テックアカデミージュニア)による、プログラミングの特別授業が開催された。

長谷戸小学校は、2019年度、東京都教職員研修センター教育課題研究「プログラミング教育」研究協力校の指定を受けたことを機に、STEAM教育(科学:Science、技術:Technology、工学:Engineering、アート:Art、数学:Mathematicsの5つの領域を対象とした教育理念)に注力。

長谷戸小学校では、2020年度から始まった小学校でのプログラミング教育必修化以前より、児童1人にタブレットPC1台を貸与し、理科などの通常授業にも活用するなど、プログラミング教育に向けた体制整備を早くから進めていた。

しかし、長谷戸小学校にはプログラミング学習分野の専門講師がおらず、どのように児童にプログラミング教育を提供していくか、学校としてかねてより課題感を覚えていたという。

2020年夏頃から、民間のプログラミング教育事業者と提携したプログラミング教育の検討を始め、「TechAcademyジュニア」と提携することが決定した。

今回の特別授業は、長谷戸小学校3年生〜6年生の希望者を対象に、10月20日〜12月15日の放課後に、ビジュアルプログラミング言語「Scratch」を活用した作品作りを教える内容を複数回実施。
本取り組みにはEdTech導入補助金が活用されている。

「TechAcademyジュニア」は、小中高校生を対象とした全国展開のプログラミングスクール。

運営会社であるキラメックス株式会社は、社会人向けのプログラミングスクール「TechAcademy」を2012年から展開しており、そのプログラミングスクール事業でのノウハウを活かして、小中高校生向けプログラミング教育事業も2018年から展開している。

プログラミング特別授業の様子は

12月15日のプログラミング特別授業に参加したのは、3年生17名、4年生6名、5年生5名、6年生1名の受講希望者計29名。

授業は、「TechAcademyジュニア」で展開している「はじめてのScratchコース」「Scratchドリルコース」(※)と同じ内容を児童たちに教え、授業の最後には児童たちに「メッセージカード」という成果物の提出を求めるコースとなっている。

「TechAcademyジュニア」から派遣された講師がScratchを使った作品作りを教える。
長谷戸小学校の児童たちには1人1台にSurface Proが貸与され、プログラミングを使った作品作りに挑戦していた。

長谷戸小学校では、今回の取り組みの提携先に「TechAcademyジュニア」を選定した理由に、児童が自律的に、かつ児童同士での学び合いができる授業を行えることや、社会人向けプログラミングスクール「TechAcademy」を長く展開しておりプログラミング専門分野の教材と講師が充実していることを挙げた。

授業中の児童たちは、黙々と自分のPCに向かっているだけではなく、近くの児童同士で相談しながら、プログラミングの作品作りに取り組んでいた。
授業の最後に児童が作品を発表する様子。作品には「10年後の自分へ贈りたいメッセージ」が込められ、メッセージを彩るさまざまな効果をScratchによるプログラミングで施されている。
作品内のScratchのコードを自身に説明させ、どうやって作品を作ったのか、約30名の小学生たちが各々プレゼンしていた。

今回の取り組みについて~長谷戸小学校とキラメックス株式会社へのインタビュー

プログラミング教室の後、取材に訪れていた複数メディアと、オンラインインタビューの時間が設けられた。

インタビューには、長谷戸小学校副校長 望月伸司氏と、今回の取り組みを担当したキラメックス株式会社経営企画グループ丸山愛氏が対応してくれたので、その内容の一部をまとめたい。

長谷戸小学校からは副校長 望月伸司氏がインタビューに対応してくれた。
―――長谷戸小学校としては、今回「TechAcademyジュニア」を導入してどんな効果やメリットを感じましたか?

望月氏:
学校側としては「児童がプログラミングを楽しむことができ、もっとプログラミングを学習してみたい、という状態にする」ということを目標に掲げていたのですが、プログラミング教室実施後の児童へのアンケート結果から、この目標は達成したと考えています。

12月8日時点でアンケートを行ったのですが、以下のような質問に対して、ほぼすべての児童からプログラミングについて好意的な回答が返ってきました。

児童たちは、最初こそ何をしたらよいか、どう作ればよいのか、講師の方からの指示を待つような状態で授業を受けていました。

しかし、プログラミング教室の回が進むにつれて、児童の方から「私はこんなものを作りたい」「こんな動きにさせたい」「ここで光らせたい」など、自発的に希望が出るようになりました。

自分のアイデアや発想を形にしようとする意欲、といったものがすごく大きくなったと思います。

―――今回はEdTech導入補助金を活用しての取り組みでしたが、来年度以降はEdTech導入補助金が継続するかわからない、といった状況と思います。そのような状況ですが、今回のような放課後の特別プログラミング教室などの取り組みは今後も実施されたいというお考えはありますか?

望月氏:
EdTech導入補助金は学校側の費用負担がなく民間企業と協力してプログラミング教室を実施できたので、大変助かりました。

今回のプログラミング教室の取り組みを振り返って、次年度以降はどういう形で民間と連携できるか、学校と民間、お互いのメリットを確認し、相談しながら話し合っていくべきと考えています。

民間企業からのオファーや、EdTech導入補助金と同じような制度が今後も継続すれば、学校側としてはぜひ取り入れていきたい、と考えています。

―――キラメックス株式会社では、「TechAcademy」と「TechAcademyジュニア」、2つのプログラミングスクールを展開されていますが、それぞれにはどんな違いがありますか?

丸山氏:
まず、「TechAcademy」では大学生や社会人、「TechAcademyジュニア」では小中高校生、と受講者の対象が大きく違います。

「TechAcademy」の社会人だと、転職、副業、起業など明確な目的で受講する方が大半なので、プログラミングに対する勉強意識が高い方が多いです。

一方、「TechAcademyジュニア」の生徒・児童だと、学習する目的意識がまだはっきりしていない方も多く、「TechAcademy」と比較すると、生徒・児童のモチベーションの維持や、オリジナリティの発揮のさせ方などに気を付けて、生徒・児童たちを学習にしっかりと導けるような工夫を心掛けています。

―――「TechAcademyジュニア」を展開していて、今回のような学校でのプログラミング教育支援に活かせたことや、工夫したことはありますか?

丸山氏:
今回の長谷戸小学校での取り組みでは、45分という授業の時間内で、児童の全員がちゃんと授業内で教えたことを作業して成果物を出せるまでを完結できるように、教材作成と指導方法については工夫しました。

そのあたりのノウハウは、「TechAcademyジュニア」で気を付けている生徒・児童のモチベーションの維持や、オリジナリティの発揮のさせ方が活かせたと思います。

また、渋谷区とは別の自治体でも「総合」の授業を利用してプログラミング教育支援事業に取り組んでいるのですが、たとえば、子どもが慣れ親しんでるゲーム「Minecraft」を活用して、ゲーム内やゲームのプログラミング中に表示される英語の単語や構文を生徒・児童に書いてもらう、といった教え方も実践しています。
他には数学の座標の概念などもプログラミングでは頻出するので、そのあたりの知識も教えようとします。

英語や数学、算数など、生徒・児童たちが他の教科で習う内容をプログラミングと絡めて教える、という工夫です。

他の科目の知識について教える際は、当社オリジナルで教材や授業内容を作りますが、必ず学校側のご担当の先生にヒアリングしたり、学習指導要領などを参考にしたりしています。

―――今回の長谷戸小学校での取り組みで使われたプログラミング学習の教材は、「TechAcademyジュニア」などと同じように、児童ひとりひとりの学習進捗の確認はできるんでしょうか?

丸山氏:
「TechAcademy」でも「TechAcademyジュニア」でも、コースを受講する方の学習進捗状況は、オンライン上で生徒・児童のアカウント別にすべて把握ができます。

今回の長谷戸小学校での取り組みでも、授業後に児童の方の進捗は講師側で把握してましたので、次回の授業時の指導に活かしていました。
1回の授業が終わるごとに、進捗が思わしくない児童については、フォローの担当講師を入れたり、まずできるところからやれるようにサポートしたり、児童ひとりひとりに個別最適化されたフィードバックは行うようにしていました。

―――本日はありがとうございました。

プログラミングスクールで蓄積したノウハウをプログラミング教育へ

以上、長谷戸小学校で実施された「TechAcademyジュニア」によるプログラミング特別授業の模様をお伝えした。

当メディアではこれまでも多くのEdTech企業の取り組みを報じてきた。

キラメックス株式会社でも、これまでのプログラミングスクールでの運営ノウハウを活かしながら、今回の特別授業に向けて入念な事前準備をしていたことがうかがい知れた。

いずれ中学校・高校では、より実践的なテキストプログラミング、テキストコーディングも教えられることが求められるだろう。

社会人向けプログラミングスクールでITエンジニアを養成するキラメックス株式会社が、そのノウハウを公教育におけるプログラミング教育でどのように活かすのか、期待したいと感じた。

今後も当メディアでは多くのEdTech企業と学校との取り組みを報じたい。

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