ゲームだって、プログラミングだって、学ぶこと~ゲーム機が学びの空間になる時代に向けて

ゲームだって、プログラミングだって、学ぶこと~ゲーム機が学びの空間になる時代に向けて

2020年代は、ここ日本でも、いよいよ若年層、とくに小学生からのプログラミング教育が本格化している。とはいえ、まだまだ、従来の学校教育の延長線の面も否めない。そのような中、子どもたちが持っているゲーム機で、自分がプログラミングしたゲームを動かせる環境が整ってた。

今回、それを実現する「MakeCode Arcade」を対象にした書籍『10才からはじめるプログラミング MakeCode Arcadeで自分だけのゲームを作ろう』の執筆者である、ロジックラボ for kids大角茂之氏に、2020年代のプログラミング教育についてお話を伺った。

プログラミングを教える大角茂之氏。
プログラミング教室講師。岡山市内で、小中学生を対象にプログラミングワークショップを開催する。2014年から現在まで100回以上のワークショップを開催。YouTubeではScratch、MakeCode Arcade、Unityなどのプログラミング解説動画を公開。ブログでは、Scratchを使用した初心者~中級者向けのゲームプログラミングレシピを紹介している。

日本のプログラミング教育の現状と可能性

大角:
2020年度から始まった新小学校学習指導要領によるプログラミング教育の開始を受けて、小学生でも簡単に、ブロックを使ってプログラミングできるいわゆる「ビジュアルプログラミング言語」が注目されました。

そして、大人でも「プログラミングって何?」という方が多い中でいよいよスタートしたIT時代の教育課程としてのプログラミング。当初は学校の先生や保護者の方も、何を教えればいいのか手探り状態でしたが、文部科学省を中心に、各学校の取り組みをまとめたサイトなどで情報共有をして少しずつ事例が集まってきています。

文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1375607.htm

未来の学びコンソーシアム
https://miraino-manabi.jp/

プログラミングを学ぶ入口ができてきた

こうした社会情勢の変化、教育環境の進化により、「パソコンやプログラミングに興味を持ってもらう」「どんなことができるのかを知ってもらう」、その入口の部分ができてきたのではないかと思います。

そして、子どもたちは「プログラミングが楽しそう」とわかったら、好きな子たちはどんどん自分で進んでいきますから、まずはその入口に立たせてあげることが大事です。

とはいえ学校によって取り組みには差があります。

子ども主体でパソコンに触れられる機会が学校にはあまりないですし、学校のパソコンで作ったものはほとんどの場合持って帰ることができません。

プログラミングをじっくりやりたいとなったら、やはり自宅での活動が主になっているのではないでしょうか?

プログラミングを楽しみたいという子どもたちに「作りたい」気持ちを持ってもらう

大角:
ようやくスタート地点に立てるようになった2020年。そして、2021年を迎え、次に向けての動きが必要です。

プログラミング教育を推し出す際、よく耳にするのが「プログラミングをすると論理的思考が身につく」とか「数学が得意になる」といったコピーです。しかし、これらは子どもたちにとってはあまり魅力的な響きではありません。

この意識の差を埋めるにはどうすれば良いか。今回、私が『10才からはじめるプログラミング MakeCode Arcadeで自分だけのゲームを作ろう』でゲームを題材にしているのは、子どもたちに、まず「作りたい」という気持ちを持ってもらいたいからです。

プログラミングは、勉強したことをただアウトプットすることにはあまり意味がありません。「何をしたいか」をまず考えて、それをどう実現するかを試行錯誤するくり返しですから「自分がどうしたいか」「何を作りたいか」といった目標がなければなかなか上達しません。

ゲームは「こういうときはこうなる」といったルールが明確で、言葉で表現しやすく、プログラミングと親和性が高い題材です。

テレビゲームだけでなく、鬼ごっこやかくれんぼ、オセロや○×クイズなど、子どもたちは普段からさまざまなゲームで遊んでいますし、自分たちでオリジナルのルールにアレンジすることもあります。そういう意味では日常的にゲームを作っていることになりますね。

点数を付ける・グループを分けるといった内容も普段から遊んでいるゲームに例えると理解しやすいです。

ゼロからものづくりを始めるのは、大人でもなかなか手がでないものです。ゲーム作りは子どもたちがふだんの遊びの中で得た経験を活かしながら、楽しくプログラムを学ぶことができます。

今回私が執筆した書籍にはその狙い、そして、まず子どもたちに「作りたい」という気持ちを持ってもらえることを目指しています。

低学年からのプログラミング教育で必要なこと

大角:
新しい学習指導要領でも、小学校のプログラミング教育では、プログラミングという教科はなく、算数や理科などの教科の中で使われたり、総合の時間にプログラミングをするといった活動が多いのが現実です。

その実情を踏まえると、低学年のうちは、算数や理科の中からプログラミングに触れるよりも、「図画工作」に近い気持ちでパソコンに親しむことからスタートするのが良いと思います。

今小学校の授業で体験できるプログラミングは、パソコンでできることのほんの一部分にすぎません。ですからプログラミングを扱う授業でわからない部分があったとしても、小さいころに苦手意識をもってしまうのはもったいないです。

プログラミングが得意な子・絵が得意な子・音楽が得意な子、子どもたちの興味や個性はそれぞれです。そのために、まず、子どもたちにとって何が得意なのか、そして、パソコンはさまざまな分野の人が使うもの・使えるものなので、自分に合った使い方を探したり、先生が一緒に探してあげてみるのが良いでしょう。

お絵かきツールで絵を描いたり、音を組み合わせて鳴らしてみたり、録音してみたり、動画を撮ってみたり……自分の興味のあることに使ったり調べることで、パソコンって便利なものだなとなんとなく感じてもらえれば、最初の一歩としては十分です。

「自分で作ったゲームを動かせる」――MakeCode Arcadeの魅力

それではここで、今回執筆した書籍で取り上げている「MakeCode Arcade」について紹介しましょう。

MakeCode Arcade
https://arcade.makecode.com/

MakeCodeArcadeの一番の魅力は「実際のゲーム機に入れて動かすことができる」という点です。

2021年1月15日現在、Arcadeは日本語に対応していますが、以前は英語のブロックでプログラムしなければなりませんでした。それでも、当時から教えていた日本の子どもたちに、「このゲーム機で動かせるよ」と説明してチャレンジしてもらうと、皆、がんばってゲームを完成させることができました。

実際に手に取って遊べるというのは、モチベーションアップにつながる要素だと思います。ゲーム機に入れておけば、家族や友達が実際にゲームで遊んでいる様子を見ることができるので、次の作品作りへの意欲も湧いてきます。

ゲーム作りに便利な命令がたくさん用意されているので、初心者でも比較的チャレンジしやすいですし、実際のボタンやセンサとプログラムを連動することで身の周りにある機器もこのようにプログラムされて動いていることが実体験として理解できるのも良い点です。

ブロックでプログラミングすることに慣れてきたら文字でプログラミングするモードにすぐに切り替えることができ、文字入力の補助機能もあります。

ブロックで学んだことがすぐに活かせるので、プログラミング言語のJavaScriptやPythonを習得したい人にもおすすめです。

コロナ禍、2021年のプログラミング教育に向けて

大角:
プログラミングをはじめ、IT業界は新しいものがどんどん出てきますから、先生より子どもたちのほうがプログラミングに詳しいといった状況が、今後ますます増えてくるのではないでしょうか。

ですから、プログラム教育に関しては、先生が技術的なことを教えて習ったことを反復するという従来型の学習スタイルだけではなく、先生自身は教えるのではなく、子どもたちの学びを見守る、聞き役にまわる、一緒に考えるといった立ち位置で、学習を応援することが大事になると考えます。

最近では、夏休みの自由研究にプログラムを使う子も増えていますので、2021年の夏は、学びの場がオンラインでもリアルでも、そういった作品の提出にも柔軟に対応できるといいですね。

10才からはじめるプログラミング MakeCode Arcadeで自分だけのゲームを作ろう
大角 茂之(著)、大角 美緒(著)、日本マイクロソフト株式会社協力(技術評論社)
Microsoft MakeCode Arcade(メイクコード アーケード)を使ったゲームプログラミングの入門書です。MakeCode Arcadeを使うと、ブロックを組み合わせて簡単に2Dゲーム作りを楽しめます。ブラウザだけでプログラミングができるので、特別なソフトをインストールする必要はありません! 本書では、簡単な追いかけっこゲームから始まり、アクションゲーム、シューティングゲーム、対戦ゲームなどを実際に作りながら、プログラミングを勉強していきます。 ご購入はこちら(amazonへ)

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