視覚障害のある方へのオンライン講習レポート その4~ICT活用の現場から㉕

視覚障害のある方へのオンライン講習レポート その4~ICT活用の現場から㉕

コロナ禍をきっかけに「やってみよう」と始まった、視覚障害(弱視)の方へのオンライン講習。今回は実際にオンラインで説明したアプリについて紹介したい。

物体認識アプリ「Seeing AI」

Seeing AI起動画面

先方から要望があった最初のアプリは、ここまで導入部分で紹介してきたSeeing AI。Microsoftが開発したこのアプリは、カメラにかざしたさまざまなものを音で教えてくれる。

たとえば紙の書類。弱視の方にとっては視認しにくい大きさの文字でも、アプリを起動したスマホのカメラにかざすことで、文字情報をリアルタイムに読み取り音声に変換して読み上げてくれる。またお札にかざせばそのお札が何円札かを音声で読み上げてくれるといった具合だ。こうした機能を見聞きしたことがない人にとっては、まさに魔法のように感じるだろう。

もっとも、カメラを使って読み上げをするアプリは他にもある。お札を判別するアプリは海外産から国産のアプリまで登場しているし、紙の文字情報を認識するいわゆるOCR系アプリもいくつかある。

それでもSeeing AIがとくに注目を集めている理由は主に二つあると考えられる。

Seeing AIの特徴①:多くの視覚障害向け機能を搭載

1つは、Seeing AIというアプリには、上で述べたようなさまざまな読み上げ機能が多数搭載されていることだ。

従来のアプリでは、お札判別はたとえば「Aというアプリの機能はお札判別のみ」。「BというアプリはOCRのみ」といった具合に、アプリひとつにつき機能もひとつというタイプが多かった。

一方でSeeing AIは、以下に挙げた複数の読み上げ機能を搭載している(2021年1月29日現在)。

  • 短いテキスト
  • ドキュメント
  • 製品
  • 風景
  • 通貨
  • 世界
  • ライト

各機能の概要はSeeing AIの紹介ページを参照いただくとして、1つのアプリでこれだけの読み上げ機能に対応したものは珍しい。

一方でユーザからすれば、1つのアプリでさまざまな機能を使えるメリットは大きい。まず複数のアプリをダウンロードする必要がなくなる。視覚に障害のある方にとっては、アプリをインストールするだけでも大変手間がかかる場合もあるからだ。

Seeing AI内で読み上げ機能を切り替える方法さえ覚えられれば、1つのアプリでさまざまな用途に使えることの利点は少なくないだろう。

Seeing AIの特徴②:無料

Seeing AIの注目すべき特徴2つ目は、これだけ多機能なアプリが無料で使えるということだろう(2021年1月29日現在)。

いわゆる障害のある方向けの機器やソフトウェアは、有償であるものが多い。またユーザ数が少ないこともあってかその価格も高く設定されている場合が多く見られる。

それはアプリでも例外ではなく、上で述べたお札判別アプリや物体認識アプリの中には、有料だったりサブスクリプション利用となるものも多くある。

Seeing AIは、この多機能さにも関わらずフル機能を無料でダウンロード・使用できる。視覚障害のある方などSeeing AIに搭載された機能を必要とする当事者にとって、金銭的な負担が少ないことはかなりのメリットだと思われる。

使い方にはコツが必要

多機能さと無料という大きな特徴を持つSeeing AIだが、使いこなすにはちょっとしたコツも必要だ。それはそれぞれ目的に応じて読み上げのチャンネル(メニュー)を切り替える必要があること。

たとえばお札判別モードの状態のまま紙の書類にカメラを近づけても、紙の書類に書いてある文字は読み上げられない。読み上げたい目的に応じてチャンネルを切り替える必要があるのだが、VoiceOver(音声読み上げ機能)を起動した状態でチャンネルを切り替えるには、VoiceOverでの操作方法を理解した上でSeeing AIを使う必要がある。今回の相談者さんもこの点に苦労していたようだ。

次回はVoiceOverを起動した状態でSeeing AIのチャンネルを切り替える方法などについて紹介する。

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