LINEみらい財団が「SNSノートおおさか」をリリース~GIGAスクール構想により重要性が増す情報モラル教育

LINEみらい財団が「SNSノートおおさか」をリリース~GIGAスクール構想により重要性が増す情報モラル教育

一般財団法人LINEみらい財団は、大阪府松原市、泉南市、守口市で組成する「SNSノートおおさか」作成委員会と共同で、情報モラル教育教材「SNSノートおおさか」を開発した。

「SNSノートおおさか」は、2021年度から、3市の全小中学校にて児童・生徒のタブレット・PCに導入される予定だ。

  • 大阪府松原市、泉南市、守口市で組織する 「SNSノートおおさか」作成委員会と共同で 情報モラル教育教材「SNSノートおおさか」を開発 | LINE Corporation
    https://linecorp.com/ja/csr/newslist/ja/2021/362

2月9日には、「SNSノートおおさか」の教材内容を作成した静岡大学教育学部塩田真吾教授による教材の開発背景や特徴に関するプレゼンと、松原市立河合小学校での「SNSノートおおさか」オンライン公開授業も実施されたので、その模様をレポートする。

「SNSノートおおさか」開発背景と教材の特徴

静岡大学教育学部塩田真吾教授から「SNSノートおおさか」の開発背景や特徴に関して、説明がなされた。

塩田教授は、2014年からLINE株式会社(当時、以下LINE)と共同で情報モラル教材、SNS教材である「カード教材」の制作を開始。

2017年3月、東京都教育委員会とLINEが協定を結んで作成された「SNS東京ノート」には、塩田教授の研究室で開発した「カード教材」が取り入れられており、児童・生徒が、それぞれの学齢に即して、主体的に情報モラルについて学べる内容となっている。
「SNS東京ノート」は、紙の冊子として、東京都の小・中・高校、特別支援学校へ配布されていた。

2018年からは東京都以外の自治体でも使用してもらえるように、「SNS東京ノート」をベースに「SNSノート(情報モラル編)」を開発して、無償でさまざまな自治体への提供が始められた。
2019年には、長崎県で「SNSノートながさき」、宮城県仙台市で「みやぎ情報活用ノート」を開発・提供して、着々と全国へ広がっていった。

「SNSノートおおさか」も、「SNSノート」シリーズの流れを汲む教材だが、従来との違いとして、教育現場のICT環境整備を目的にしたGIGAスクール構想に対応することを強く意識した内容となっている。

GIGAスクール構想では、令和2年度に2,292億円の補正予算額を費やし、児童・生徒1人ひとりへのデジタル端末の支給、学校のネットワーク環境整備などを進めており、現在、教育現場のICT環境が急ピッチで整備されている。

GIGAスクール構想によって教育現場のICT環境が整備されれば、児童・生徒全員が高速なネットワークに安定的に接続できて、デジタル端末を利用した個別最適化された教育を受けられるメリットが見込まれている。
ただその一方、ICT機器の長時間利用による生活習慣の乱れや、SNSを介したトラブルなどが懸念点として指摘されている。

GIGAスクール構想をきっかけに起こりうる課題へ対処するためにも、「SNSノートおおさか」では情報モラル教育に関する題材を多く盛り込んでいる。

「SNSノートおおさか」の特徴

児童・生徒が気を付けるべき具体的なリスクとしては、ID・パスワードの紛失、授業と無関係なWebサイトの閲覧、デジタル端末を壊してしまう可能性、画面を長時間閲覧することによる目の酷使の危険性、そしてSNSのコミュニケーションで生じてしまうトラブルなどが挙げられる。

「SNSノートおおさか」は、リスクやトラブルの原因になるものは何なのか、児童・生徒自身に考えさせ、考えを深めていく中で気付きや自覚を促すことを狙いにした構成になっている。

塩田教授はプレゼンの終盤に「現在、情報モラル教育は大きな転換期を迎えている」と述べ、今後の情報モラル教育は、デジタル端末を児童・生徒に使わせない、といった使用制限を中心にした規制ではなく、デジタル端末は活用させることを前提にしながら取り組んでいくべき、と強調した。

LINEみらい財団との共同開発ならではの教育コンテンツも紹介された

さらに補足として、「SNSノートおおさか」では、従来の「SNSノート」にはなかった、LINEみらい財団展開のプログラミング教育教材「LINE entry」、金融情報リテラシー教育の一環としてキャッシュレス決済教育、といった新しいコンテンツも盛り込まれていることが説明された。

「SNSノートおおさか」は、情報モラル教育だけに特化しているのではなく、プログラミング教育やキャッシュレス決済といった、児童・生徒が今後取り組むべき課題に総合的に対応することを目指している。

松原市立河合小学校での「SNSノートおおさか」オンライン公開授業

同日、松原市立河合小学校では「SNSノートおおさか」を使用したオンライン公開授業が実施された。

授業には6年生が参加して、SNSに写真を公開するとき、夜遅くまでグループトークするときなどを題材に、どんなリスクやトラブルがあるのか、そしてリスクやトラブルにどうやって対処すればよいのかについて、小学生たち自身に考えさせ自由回答させる課題が取り上げられた。

夜遅くまでグループトークするときを題材にした問題。想定されるトラブルや、楽しくコミュニケーションをしていくために気を付けることなどを小学生たち自身に考えさせる内容だ。
授業では、小学生たちが考えた意見がタブレット端末を介して発表された。その意見によって起きる影響やメリット・デメリットについても、授業では話し合われた。

現在、「SNSノートおおさか」はLINEみらい財団のホームページから、小・中学の学齢に合わせた児童・生徒向け教材と、教員用の活用の手引きが、PDFとして閲覧、ダウンロードできる。

今後重要性を増す情報モラル教育と、LINEが参画する大きな意義

以上、「SNSノートおおさか」の開発背景と教材特徴、そして河合小学校でのオンライン公開授業の模様をお伝えした。

GIGAスクール構想により教育現場のICT環境整備が進むことで、個別最適化された学習、今後本格化するプログラミング教育などの充実化が期待されている。

しかし、塩田教授も説明していたように、今後、子どもたちがICT機器を使ったコミュニケーションを行う機会が学校内・家庭内を問わず飛躍的に増加していくことを踏まえると、情報モラル教育の充実化も重要な課題といえる。

現在でも、情報モラル教育に取り組もうとする学校は多くあるが、その取り組み状況には学校間、あるいは教師間に温度差があるのが現実だ。
また、自治体内で統一した適切な教材を継続的に確保することも難しい。

そのような状況下では、LINEみらい財団のように、自治体の壁を越えて、国内で統一的で大規模な教材作成を実施できる大企業が、情報モラル教育に取り組むことは大きな意義があるといえるだろう。

LINEみらい財団の取り組み、そして情報モラル教育の動向については、当メディアでも引き続き追いかけていきたい。

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