価格の高低だけで判断しない、ICT端末の価値 その2~ICT活用の現場から㉚

価格の高低だけで判断しない、ICT端末の価値 その2~ICT活用の現場から㉚

今回は過去の記事(25回26回)でも説明した「Seeing AI」を例に、高スペック機種の利点について取り上げたい。

テーマは「LiDAR(ライダー)」。これとiPhoneを併用することで、視覚障害がある方の利便性は格段に高まる可能性がある。

あらゆる分野での活用が期待されるLiDAR

LiDARとはレーザーを利用したリモートセンシング技術。対象物に照射した光の反射をセンサーで検知することで、対象との距離を正確に計測したり、空間の3Dマッピング技術などに応用される。

たとえば自動運転車にLiDARを搭載することで、周囲の障害物や人などを探知し衝突を防ぐセンサーとして利用される。またAR技術にも応用が効くことから、建設現場の施工記録を3Dデータで保存したり、3D図面の情報を施工現場と照らし合わせることで業務の精度と効率化を図るなどに活用されている。

LiDARは一般的にあまり知られていない技術だが、意外にも私たちの身近なところに存在する。iPhoneやiPadだ。

iPadでは一部のiPad Pro、iPhoneでは12 Pro MaxにLiDARスキャナが搭載されている。自動運転技術や建設業など、一般人には縁遠いと思われる分野で注目されるLiDARだが、私たちや障害のある方にとっても活用の余地はある。

iPhone12 Pro Max カメラレンズ付近にLiDARスキャナが搭載されている

たとえば測定系のアプリ。iPhoneやiPadでは「計測」というアプリが利用できる。カメラを利用し、目の前のものの長さや大きさを文字通り計測できる。

上の画像はiPhone12 Pro Maxの「計測」アプリで、iPad Pro11インチの外付けキーボードの大きさを測った時のものだ。ただアプリをかざすだけでキーボードの縦横の長さと面積まで瞬時に表示された。

「計測」アプリはLiDARスキャナが搭載されていないiPhoneやiPadでも使用できる。ただし計測に時間がかかったり、状況によって測定の精度が落ちる場合がある。

LiDARスキャナとSeeing AIの組み合わせで驚きの機能に

前述のようにLiDARスキャナがなくても利用できるアプリや機能はある。一方で「LiDARスキャナ搭載の機種限定で利用できる機能」も登場してきた。そのひとつが物体認識アプリとして視覚障害のある方に活用されている「Seeing AI」だ。

「Seeing AI」ではカメラを使うことでテキストを判読・音声読み上げをしたり、お札の判別や周囲の明るさや色、状況などさまざまな情報を音声で得られる画期的なアプリ。ひとつのアプリで複数の機能が使え、無料であることから利用する視覚障害ユーザーは多い。

その「Seeing AI」において、実はLiDARスキャナ搭載のiPad・iPhoneでのみ使用できる機能がある。その名も「世界」機能だ(2021年7月5日時点ではプレビュー版として実装されている)。

「Seeing AI」の読み上げモードを「世界」に切り替えカメラを周囲にかざしてみる。すると物体1つ1つに「スクリーン」「カップ」「ボトル」など次々にラベル付けされる。

ポイントはイヤフォンを使用すること。「世界」機能ではラベル付けされた物体を音声で読み上げられるのだが、イヤフォンをつけていると読み上げられた物体がどの方向にあるのか、音の聞こえ具合でわかるようになっている。

たとえばカップが自分から向かって右手にある場合、イヤフォンをつけた右耳の方から「カップ」と読み上げられる。目の不自由な方にとってモノがあるおおよその方向がわかるだけでもかなり便利だろう。

さらに、ラベル付けされたモノの中から任意のモノを検索する機能もある。検索するものの方向をアラーム音で教えてくれるため、音でおおよその方向がわかる。手に取れるほど近づけばアラーム音は停止する。

視覚障害のある方におけるLiDARの可能性

上で紹介したように視覚に障害のある方にとって、LiDARスキャナ搭載のiPadやiPhoneと、LiDARを活用できるアプリ・機器を組み合わせて得られるメリットは大きい。標準的な機種よりも導入コストは上がるが、こうした機能を活用することは視覚に障害のある方が「一人でできること」を増やすことができ、視覚的なハンデを軽減することで自立につながる可能性が広がると考えられる。

高価格な端末の購入を強いるわけではない。ただ「こうした活用の方法もある」ことを知っておくことは、多くの方にとって役に立つのではないだろうか。

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