LINEみらい財団「みやぎ情報活用ノート」高校編をリリース~重要性が増す「情報活用能力」教育

LINEみらい財団「みやぎ情報活用ノート」高校編をリリース~重要性が増す「情報活用能力」教育

一般財団法人LINEみらい財団(以下、LINEみらい財団)は、宮城県教育委員会、仙台市教育委員会と共同で、「みやぎ情報活用ノート」高校編を共同開発した。

「みやぎ情報活用ノート」では、「情報活用能力」の育成を目的とした教材で、新学習指導要領を踏まえた、活動スキル・探究スキル・プログラミング・情報モラルの4分野に関してまとめられている。

  • 宮城県教育委員会・仙台市教育委員会と共同開発した教材「みやぎ情報活用ノート」高校編を公開 | LINEみらい財団 | 活動実績
    https://line-mirai.org/ja/events/detail/62

「みやぎ情報活用ノート」高校編は、総合的に情報の活用方法について学習することで、情報化社会で必要な「情報活用能力」の育成を目指す内容で、宮城県教育委員会のホームページから、ダウンロードしてすぐに利用できる。

「情報活用能力」とは、小学校では令和2年(2020年)度、中学校では令和3年(2021年)度から全面実施、高等学校では令和4年(2022年)度から学年進行で実施される新学習指導要領において、言語能力や、情報モラルを含んだ情報を検索・整理・発信する能力などの学習の基盤となる資質・能力の1つと定義されている。

LINEみらい財団は、これまでも全国のさまざまな自治体と連携しながら、情報モラル教育に関する事業を展開している。

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宮城県教育委員会、仙台市教育委員会とは、2017年11月に協定を締結して、「みやぎ情報活用能力育成共同プロジェクト事業」を立ち上げ、宮城県内公立学校における情報モラル教育だけでなく、「情報活用能力」教育の充実化も図る活動を行っている。

2019年3月には第1弾である「小学校編」、同年11月には「中学校編」をリリースしており、2021年10月19日に第3弾となる「みやぎ情報活用ノート」高校編を開発し、公開した。

財界からも求められる教育環境のICT化

ちなみに、「みやぎ情報活用ノート」高校編リリース直前の10月15日には、一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)が「GIGAスクール構想の確実な実施に向けた緊急提言」を公表しており、高校においても小・中学校と同水準のICT教育環境を整備する必要性を訴えている。

上記提言にもあるが、小・中学校ではGIGAスクール構想によって全国的に教育現場のデジタル端末支給が普及してきてはいるものの、高校ではまだまだICT化の整備が追いついていないのが現状であり、教育業界からだけでなく、財界からも、教育現場のICT環境整備を強く求める声が上がっている。

LINEみらい財団は、現在の教育現場のICT環境整備の流れにあわせて、児童生徒たちの「情報活用能力」教育の重要性も増していると捉え、「みやぎ情報活用ノート」高校編をリリースした。

10月19日には、「みやぎ情報活用ノート」高校編を作成した東北学院大学 稲垣忠教授から教材に関するプレゼンがあり、教材詳細について解説されていたので、その模様の一部を紹介したい。

「みやぎ情報活用ノート」高校編 教材の特徴や狙いとは

東北学院大学 稲垣忠教授

「みやぎ情報活用ノート」高校編は、高校の各学年に対応したコンテンツとして「ワークシート」と「モデル指導案」から構成されており、教員が活用したい場面を想像して創意工夫を加えながら、応用できる内容だ。

「みやぎ情報活用ノート」高校編は以下の4章を中心に構成されている。

「活動スキル」編
コンピュータや図書などの情報手段を効果的かつ適切に活用するための基礎的な知識・技能を養うことを狙いとしている。
調べたことを発表する情報発信を効果的に行うためのスキルを学ぶプレゼンテーションや、情報収集手段を身に着けるためのアンケートの作り方に関する演習、生徒が共同作業を行う環境としてクラウドサービスの活用方法について学ぶことを通し、活動スキルを身に着ける。

「探究スキル」編
課題を設定・発見した上で、解決に必要な情報を集めて整理・分析し、その結果をまとめ表現する力を養うことが狙い。
集めた情報を比較検討することを通して仮説の設定について学んだり、課題解決や新たな提案創出につながる議論を深めるための役割分担を踏まえた話し合いの進め方について学んだりできる。

「プログラミング」編
高校においては、2022年度から「情報Ⅰ」が新設され、すべての高校生がプログラミングを学ぶことになる。
また、令和7年度(2025年1月)には、大学入学共通テストにおいて、プログラミングを含む「情報」が新教科として追加される予定だ。

そうした背景を踏まえ、テキストプログラミング言語を用いて発展的にプログラミングを学び、主体的な活用に結びつけられるような内容構成になっている。
具体的には、JavaScriptを使った正弦波の作図プログラムで、WebAPIを用いた効率的なプログラミングや、図書館の蔵書データベースを題材に、Excel VBAの検索プログラミングで課題解決につなげることなどを学べる。

「情報モラル」編
情報社会において適切なコミュニケーションや活動をするためのもととなる態度を養うことを狙いとしている。
内容としては、トラブル事例を一方的に伝えるのではなく、グループワークなどを取り入れながら生徒自身に考えてもらい、「当事者としての自覚」を促すことに重点を置いている。
また、高校では、情報社会への参画や責任についても考えてもらうため、災害時における情報の活用方法等について学ぶパートも設けてある。

「みやぎ情報活用ノート」高校編で想定される学習内容。4章分の学習を通して、「情報・情報技術」の使い方を学ぶことを目指している。

稲垣忠教授は、「生徒がせっかくおもしろい課題に取り組めているのに、情報をまとめる活動スキルが追いついていないと、情報を深く検索できなかったり、相手にうまく伝わるように発信できなかったりするので、それらの課題改善に今回の教材を活用してもらいたい」と語った。

「みやぎ情報活用ノート」高校編は、現場の教員に使ってもらいやすいように、この教材だけを使用した特別な授業を実施してもらうわけではなく、多くの学年、教科の授業内で教材を部分的に取り入れながら利用してもらう使用方法を想定している。

国語、数学、物理、そして情報など、問題に対処する際に教科横断的な情報活用能力を育むことも意識しているそうだ。

稲垣教授のプレゼン後には、実際に「みやぎ情報活用ノート」高校編を使用した公開授業も実施された(宮城石巻工業高等学校 電気情報科3年にて)。
生徒たちは、支給されたデジタル端末で、教材の「活動スキル」編や「プログラミング」編の内容を学びながら、出題されたテーマに即したアンケートを作成していた。
授業は、アンケートなどの成果物を作成して完結するのはなく、アンケートから得られた回答を通して、「探究スキル」編や「情報モラル」編の内容も学びながら、議論における情報の捉え方や考え方、そして情報モラルについて、生徒自身に考えてもらう形式で進行した。

必要性の増す情報活用能力の教育

以上、LINEみらい財団が公開した「みやぎ情報活用ノート」高校編、および教材説明会の模様をお伝えした。

GIGAスクール構想により、全国の小・中学校において教育環境のICT化が進んでいることは非常に喜ばしいことで、高校においても1日でも早い整備状況の前進が願われる。

しかし、昨今、東京都町田市の小学校でも大きな話題になった、タブレット端末を介したいじめ問題などを鑑みると、児童生徒、教員にとって、教育現場における情報の整理や発信は、今後ますます重要性の高まるテーマといえる。

LINEみらい財団が示したように、「情報活用能力」育成と情報モラル教育を兼ねる「みやぎ情報活用ノート」高校編のような教材は、今後も教育現場に必要とされるだろう。

LINEみらい財団の取り組み、「情報活用能力」教育の動向について、当メディアでも引き続き追いかけていきたい。

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