「Tech Kids Grand Prix 2021」決勝大会レポート~環境問題、SDGs…子どもたちから社会課題を問うアプリが多く登場

「Tech Kids Grand Prix 2021」決勝大会レポート~環境問題、SDGs…子どもたちから社会課題を問うアプリが多く登場

12月5日、東京・渋谷ヒカリエホールにて、「Tech Kids Grand Prix 2021(テックキッズグランプリ2021)」の決勝となるプレゼンテーション大会が開催された。

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「Tech Kids Grand Prix」は、小学生向けプログラミング教育事業を運営する株式会社CA Tech Kids主催の、小学生のためのプログラミングコンテスト。2018年から毎年開催され、今大会で4回目。
昨年の決勝大会の模様は当メディアでも報じている。

「Tech Kids Grand Prix 2020」決勝大会レポート~機械学習やアジャイル開発…小学生が開発したプロ顔負けのアプリを紹介

今大会は、昨年の前回大会から1.4倍超となる3,122件の参加応募が全国各地より寄せられ、決勝大会では1次、2次、3次審査を通過して選出された10名の小学生たちが登壇。

ファイナリストである小学生たちが、コンピュータプログラミングを用いて開発したゲームやアプリなどのオリジナル作品を、作品に込められたテーマとともに紹介するプレゼンテーションを披露した。

今大会も、ファイナリストたちの作品はいずれも高いプログラミングスキルと表現力を備えており、作品とプレゼンを見た大会審査員をはじめ、多くの大人が驚愕した。

Tech Kids Grand Prixでは、「21世紀を創るのは、君たちだ。」をスローガンに掲げ、全21の企業や団体が協賛。

株式会社Cygamesをはじめ、Facebook Japan株式会社、東急株式会社、株式会社サイバーエージェント、一般財団法人LINEみらい財団の4社・1団体は、決勝大会の審査員も務めた。

決勝大会の結果やファイナリストたちのプレゼンや作品紹介の全容は、大会公式サイトからYouTubeのアーカイブ動画が視聴できるので、ぜひチェックしてみてほしい。

  • 【No.1小学生プログラマー決定!】TKGP2021決勝プレゼンライブ配信 | Tech Kids Grand Prix 2021 テックキッズグランプリ | Tech Kids School小学生のためのプログラミングスクール

当記事では、今大会で第3位、第2位、第1位を受賞した小学生たちの作品とプレゼンの模様を伝え、その高いプログラミングスキルと表現力について紹介したい。

地球温暖化問題を楽しみながら学ぶゲームアプリ「君が10年後の世界を作る~温暖化のない街づくり」

まず、第3位を受賞したのは加藤諄之(かとう・じゅの)さん、東京都の3年生。

手前右:加藤諄之(かとう・じゅの)さん。(手前左:審査員を務めた株式会社Cygames CTO室 Technical Director 永谷真澄氏)
  • 加藤諄之さん作品紹介動画
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加藤さんは今大会ファイナリストの最年少出場者。
地球温暖化問題を解決するため、楽しみながら問題について学び、日々の習慣を変えることを目的にしたゲームアプリを開発した。

「人の前で話すことが大好きです」と語る加藤さんから、大きな身振り手振りを交えた情熱的なアプリ紹介プレゼンが披露された。

ゲームは3ステージ構成。ステージ1で温暖化の影響を知り、ステージ2で問題の原因と対策を把握、そしてステージ3で問題解決を目指す未来の技術で遊ぶ、といった流れでゲームは進められる。いずれのステージでも、温暖化問題について考え行動を起こせるよう設計している。

アプリ上のテキストはすべてひらがなで統一。ステージによっては音声解説や仕組みガイドも付けて、ユーザーの使いやすさには考慮して開発した。

各ステージの特徴は以下だ。

ステージ1:
温暖化が進むと起こる問題を、森林火災、ウイルス、水不足、災害の多発、海水面上昇による島の水没、気温上昇、農作物被害と7つに分類。それぞれの問題が放置されると、さらにどのような被害や問題を引き起こすか、詳細を学べる。

ステージ2:
ステージ1で学んだ温暖化問題について、原因と対策を「街づくり」を通して知るゲームステージ。ゲームでは、街のCO2排出量を減らすため、火力発電所を太陽光発電所に建て替えたり、ガソリン車を水素自動車に変更したりできる。ただ、街づくりする際、その街に暮らす人々が快適に暮らせるかどうかも配慮されるように「しあわせ値」というポイントを設定している。

ステージ3:
「CO2吸収ドローン」で大気中へ排出されたCO2を回収するゲームステージ。「CO2吸収ドローン」というアイデアは、単なる思い付きではなく、実際に世界中で開発が進められている、空気中のCO2を吸収する新技術DAC(Direct Air Capture)から着想した。

加藤さんがアプリの中でこだわったポイントとして、ステージ2の「しあわせ値」が挙げられた。

ステージ2で登場する「しあわせ値」。

温暖化問題への解決ばかりを優先して、その街に暮らす人の気持ちに配慮しない街づくりにはならないように、ステージ2のゲームには「しあわせ値」というポイントが用意されている。
たとえば、CO2排出量削減だけを優先すれば、街にひたすら太陽光パネルを設置すればよい。
しかし、それでは街に暮らす人々が安らげる公園や、家畜の飼料を育てる土地が、確保できなくなる。

加藤さんは、街の人々の気持ちを無視した街づくりでは、十分に環境問題解決に貢献できていないと考え、ゲームユーザーが環境と人々の気持ちのどちらにもやさしい街づくりができるように、「しあわせ値」をゲーム内に設計したという。

街の電気の整備とともに「しあわせ値」も増やさないとゲームクリアができない設定になっている。

ゲームクリアに関わってくる「しあわせ値」。一定ポイント数を超えると、木1本が1年間に吸収するCO2と同じ効果を街にもたらすボーナス設定も施されているそうだ。

「しあわせ値」の設計については、審査員を務めた東急株式会社 沿線生活創造事業部 ウェルネス事業推進グループ 課長 稲葉 弘氏も「当社も事業として街づくりを行っているので、しあわせ値を設けるという考え方はとても感心しました」と高く評価した。

「しあわせ値」以外には、「地球やさしさポイント」という値も設けられている。環境にやさしい行動を毎日記録してポイント化して、行動の習慣化を促し、温暖化問題解決への行動を実感できる機能だ。

「地球やさしさポイント」機能では、温暖化問題解決への貢献ができているかどうかを7つの項目からチェックする。

加藤さんはプレゼンの終盤に、機能追加としてステージ2の街づくりに「コスト」を導入し実都市への応用を目指すという目標や、ステージ3に登場するCO2吸収ドローンを開発する夢を語り、プレゼンを締めくくった。

パズルゲームとアクションゲームの要素が組み合わさる独自のゲームアルゴリズムを備えた「MATRIX 5×5」

続いて、第2位を受賞したのは長谷部環(はせべ・たまき)さん、静岡県の6年生。

手前右:長谷部環(はせべ・たまき)さん。自宅の静岡県からリモートで参加した。
  • 長谷部環さん作品紹介動画
  • プレゼンテーション動画

長谷部さんは今大会で通算3度目の出場。参加した3大会で、一貫してゲームアプリを制作している。

長谷部さんはプレゼン前には「ビジュアルプログラミング言語Scratchによるアプリ開発の自由度の高さが伝わるとうれしい」と語っていたそうで、Scratchの機能を存分に使用して開発されたゲームアプリ「MATRIX 5×5」を紹介した。

当ゲームは、パズルゲームとアクションゲームの要素が組み合わさった高い独自性を持ち、プレゼンではおもにゲームシステムの詳細が説明され、長谷部さんのゲーム作りやScratchに対するこだわりなどが伝わってきた。

ゲームでは、縦5行横5列の25マス、正方形型グリッド(直線が格子状に並んだ図形)の中に動きが制限された自機を操作する。ステージ中に、自機に向けて放たれるさまざまな弾幕を避けながら、ステージクリアを目指す。
25マスのグリッドは、ゲーム中に左右に動いたり、傾いたり、縮小・拡大したりする。グリッドの移動や変形によって弾幕を避ける難易度がステージによって変化する。
ステージ背景、自機、弾幕、メニューにいたる、ゲーム内のすべてのグラフィック要素をScratchのペン機能のみを使い、長谷部さん自身で描画した。Scratchですべての画面表示をペンブロックだけで行うことは、「100%pen」と呼ばれる高度なテクニックだ。
ゲームシステムの工夫として、自機の動作を25マスのグリッド内に制限した点が紹介された。この制限がゲームの独自性を演出する。
各ステージのテーマ曲も、ベースとなる曲はフリー音源から引用したものの、すべて長谷部さんが作曲した。作曲にはmacOS/iOS用音楽制作ソフトウェア「GarageBand」を使用。

上記以外にも、グラフィックが不自然な挙動にならないような補間処理や、弾幕の難易度調整など、ゲーム開発時に気を遣ったポイントもプレゼンでは紹介された。

プレゼン後の審査員からの質疑応答で、株式会社Cygames CTO室 Technical Director 永谷真澄氏からは、「5×5のグリッド内で自機の動作を制限する独自性にとても驚きました。パズルゲームとアクションゲームの要素が組み合わさっていて、ゲームの難易度もステージによって変わりおもしろい」と語り、このゲーム最大の特徴であるグリッドについて評価するコメントをしていた。

ゲーム開発やゲームプログラミングにおいて、ゲーム内で再現性のある一定的、形式的に処理される動作・手順のことを、「ゲームアルゴリズム」と呼ぶことがある。

ゲーム開発・運営事業を展開するCygamesの永谷氏も注目した、5×5のグリッドとグリッド内で自機の動作が制限される、という珍しいゲームアルゴリズム。
今回のアプリではその点が高く評価されたようだ。

機械学習も活用した点字・指文字翻訳アプリ「楽しく学ぼう!!コミュニケーションアプリ」

そして第1位、今大会のグランプリに輝いたのは、後藤優奈(ごとう・ゆうな)さん、大分県の4年生。

手前右:後藤優奈(ごとう・ゆうな)さん。
  • 後藤優奈さん作品紹介動画
  • プレゼンテーション動画

後藤さんが開発したのは、点字・指文字を「なまぶ」「ためす」「つかう」「しらべる」ことができるコミュニケーションアプリ。

機械学習も活用した手話や点字の翻訳機能が備わったアプリで、プレゼンではSDGsで提唱される課題の解決へつなげたい、という後藤さんの思いも紹介された。

後藤さんは以前から手話や点字に関心があり、今年知ったSDGsの問題解決にも、手話や点字を学ぶことが活かされると考え、今回のアプリ開発を決意した。
アプリでは点字・指文字を楽しく学べるゲームが体験できる。点字・指文字それぞれに、「まなぶ」「ためす」「つかう」「しらべる」という4つのモードが用意されている。
「まなぶ」モードでは、画面上に表示されるキーボードのボタン上にマウスのカーソルをあてると、該当する点字・指文字が表示される。
「ためす」モードでは、画面上に点字・指文字の画像が表示されるので、キーボード上のボタンをクリックして、正解・不正解を当てるクイズが展開される。
「つかう」モードでは、キーボードをクリックして単語を入力すると、該当する点字・指文字が表示される。
点字の「しらべる」モードでは、画面上にでっぱりのある部分をクリックして「しらべる」ボタンをクリックすると該当する文字が何を表示する。
指文字の「しらべる」モードでは、カメラで指文字を認識させ該当する文字を表示する。指文字の画像認識には、Scratchの拡張機能で、機械学習を活用した「ML2Scratch」を利用した。

今後より改善していきたい点としては、指文字の画像認識機能の精度を高めることが挙げられた。
現在は1文字ずつの認識に留まるが、今後は複数文字や指の動作も認識できるようにアップデートを検討している。

また、このアプリの開発中には、視覚、聴覚に障がいを持つ人たちにも実際使ってもらい、フィードバックをもらったそうだ。
そのため、キーボード・マウス・タッチパネルすべての操作に対応したり、画面上の配色に気を遣ったり、アプリにはアクセシビリティ配慮が工夫として施してある。

後藤さんは、このアプリを通して、点字や手話に興味を抱く人が増え、すべての人が自由にコミュニケーションできる社会づくりにつながってほしい、という願いを語り、プレゼンを締めくくった。

社会課題を問う作品が多かった今大会~次世代の子どもたちへの希望

以上、Tech Kids Grand Prix 2021 決勝大会、第3位から第1位までの受賞者たちの作品とプレゼンの模様をお伝えした。

当記事で紹介した3人以外の小学生も、例年通り、ファイナリストだけあって全員が高いプログラミングスキルを備えていた。
そして、今大会の作品傾向としては、環境問題やSDGsを題材にしたアプリ・ゲームが多かった。

株式会社Cygames CTO室 Technical Director 永谷真澄氏

審査員を代表して永谷氏は、大会を振り返る総評でも、今大会、社会課題を問う作品が多かった傾向についてふれながら、「作品づくりとは、単にプログラミングをすればよいというわけではなく、どんなことを表現しようかな?どんなことを伝えようかな?と考えた上でプログラミングをする経験が大切です。今大会ファイナリストの方々は自然とその経験を積んでいて、今後の活躍を期待しています」と語り、大会の幕を閉じた。

永谷氏も語るように、プログラミングは課題の解決・改善を実現する手段の1つである。

今大会で、次世代を担う子どもたちが、社会や環境の課題に関心を抱きながら、課題解決・改善に取り組むためのプログラミングスキルを身につけたことが伝わり、将来に希望を抱ける気持ちになった。

次回のTech Kids Grand Prixも、子どもたちが今度はどのような作品を披露してくれるのか、非常に楽しみである。

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