【私塾界4月号】2022年 東大・国公立大入試の進化と対策ポイントとは?

【私塾界4月号】2022年 東大・国公立大入試の進化と対策ポイントとは?

学習塾や予備校の経営者をメインターゲットとした情報誌『月刊私塾界』。
『月刊私塾界』では、全国の学習塾にとって有益になる情報を、「塾・企業」「教育ICT」「地域教育」「受験」といったテーマにて、数多く紹介しています。

『月刊私塾界』で紹介される情報は多岐にわたり、それらは学習塾や予備校の経営者だけに限らず、教員、EdTech企業、教育委員会など、教育業界に携わる者なら誰にとっても役立つものです。
EducationTomorrowでは、今回から月刊私塾界に掲載された注目すべきニュース・トピックを、転載します。


【私塾界4月号】2022年 国公立大入試の進化と対策に迫る

2022年2月25日(金)より実施された全国の国公立大学入試は、受験界に新たな衝撃をもたらした。「思考力」「判断力」「表現力」と言われる新しい学力観が、様々なタイプの設問となって受験生の前に姿を現した。それらの問題群を、単に「難化」や「易化」という枠組みだけで捉えるのは、あまりにもったいない。

新傾向化する入試問題の本質に光をあて、出題の意図を探究してみると、そこには入試そのものに込められた大切なメッセージがいくつも浮き彫りになる。

本稿では、のべ十万人を超える人財開発研修実績と非認知スキル研究実績を持つサマデイグループ(本社:東京都千代田区・相川秀希CEO[日本アクティブラーニング協会理事長])による、独自の分析記事を掲載する。(文責:日本アクティブラーニング協会)

東大英語2-[A]から分かる〈入試問題進化論〉

「国公立大学の入試問題には、日本の教育指針が表出する」と指摘されることがある。ここでは、今年受験生をとりわけ困惑させた東京大学の自由英作文2-[A]について掘り下げてみたい。「芸術は社会の役に立つべきだ」という主張について、独自の見解を述べるという問題だ。2009年あたりから謳われたSTEAM教育の必然を立証するような問いだが、この問題を単年度的ではなく、「出題変遷」という考え方に基づいて捉え直してみると、東大が自大学の入試問題にどのようなメッセージを込めようとしているのかが見えてくる。左図は、2013年から本年までの東大英語2-[A]と、トレンドとなった教育キーワードの対応年表だ(図1)。

【図1】 東大英語2─[A]と、トレンドとなった教育キーワードの対応年表。サマデイグループの人財開発メソッド(SDGsカリキュラム)が、大学入試問題でいくつも的中していると話題に。左は2016年に実践した問題で2019年出題と類似。

2013〜2015年には、いわゆる「絵図を見て答える問題」が並んだ。サマデイグループでは、この時代のことを「状況解釈力の時代」と呼んでいるが、いずれも絵図に示された状況を解釈する能力が求められている。アクティブラーニングの重要性が叫ばれた始めた時代背景を鑑みると、学習者の洞察力を問うこのような出題の意図にも合点がいく。

これに対し、2016〜2018年には「状況設定力の時代」が到来する。設問中に示されている状況の抽象度が一気に上がり、与えられた設定に、受験生独自の「設定」を加えない限り、解き進めることすら出来ない。このような出題傾向の背景にも、日本の教育改革の進捗が垣間見える。2017年の問題は、まさに教育の一大テーマであった「ポートフォリオ教育」を筆記試験で実現したようなもので、試験会場の一瞬を、受験生がどのように切り取っているかという真の観察眼を問うている。

また、2019年の「祝日問題」は東大にとって転機となった問題だ。「全世界を視野に、新価値を創造する」という「創造的思考」を問う問題は、まさに東大からの挑戦状と言えるだろう。日本の教育改革も新価値の創造の渦中だった。一人一端末の整備によって学びをつなげる「GIGAスクール構想」が、教育の新価値として発起されたのがちょうどこの年。やはり入試問題には時代の願いが反映すると言えそうだ。

いよいよ訪れた「哲学的思考」の時代

そしてこのような流れの中で注目すべきは、2020年以降の問題である。「哲学的思考の時代」という標題からもお気づきかと思うが、設問中に解答の補助線となる情報が一切示されず、真正面から受験生の考え方を問う設問に一変している。受験生が独自の哲学を持たない限り、いくら英語力が高くても、試験用紙にペンを走らせることはできない。

コロナ禍によって未曾有の事態の真只中を生きる私たちには、もはや過去の正解をリフレインするような力は求められていない。日々直面する全ての「初見問題」にいかに立ち向かうことができるのか。入試問題とは、そのような見えない未来の予習だとも解釈できそうだ。

サマデイグループではこれまでも東大英語2-[A]の関連記事を公開している。下記の東洋経済ONLINE(2016年掲載)の記事も参照してほしい(https://toyokeizai.net/articles/-/111537)。

【まとめ①】入試問題は時代を映す鏡。これからの時代は、受験生の「哲学的思考」を問う問題が頻出!

東洋経済ONLINE(https://toyokeizai.net/articles/-/111537

全国的に広がる複合思考型の入試問題

これは、1960年に西田佐知子が歌った〈アカシアの雨がやむとき〉の歌詞の一部だが、実はこれは本年の名古屋大学の日本史[前期日程]で示された史料でもある。太平洋戦争敗戦後のGHQによる民主化政策と社会運動の文脈で、本歌詞を参考に、沖縄の祖国復帰運動について考える問題が出題された。歌謡曲の歌詞が史料になるという発想自体が極めて新しい。当然のことながら、歌を知らない受験生が多い中、新情報として「詩」を詠む力が日本史の中で問われたということだ。「史実」と「詩」という異なる2点を結びつける「複合的思考」が問われている。

新潟大学法学部の小論文でも、この「複合的思考」は解答の鍵を握った。少子化対策としての結婚支援の是非について、具体的な賛成・反対の意見を記述しながら考えを述べるという問題だ。ここでは、「少子化対策」という政策レベルのマクロな視点と、「結婚」という極めて個人的なミクロの視点とを複合的に考える力が必要だ。

また、特筆すべきは、本年の東大数学だ(図2)。それぞれ問題は異なるが、〈文科〉〈理科〉の両方で、「ベクトルと確率の融合問題」が出題された。このような領域横断型の問題は非常に珍しく、複合的思考を問う問題のニュータイプと言うことができるだろう。

【図2】2022年 東大の数学入試問題より

【まとめ②】多次元情報を統合する「複合的思考」を問う問題が鍵を握る!

ちなみに、前述の東大英語2-[A]で問われたような「芸術の社会的意義に対して自分の意見を持つ」という問いかけは、大学入試のみならず、企業の人財育成の文脈でも全く同じように求められている。サマデイグループで実践する数多くの企業研修では、近年「アーティスティックリーダー(アートの思考を持ったリーダー人財の育成)」というテーマで、人財開発研修を依頼されることが多い。ここでは、大手旅行会社の人財開発研修の中で、2018年に実践した同様のトピックの研修メソッド(SDGsカリキュラム)を2種類ご紹介する。

サマデイグループの人財開発メソッド(SDGsカリキュラム)。左図は2022年 名古屋大学日本史[前期日程]の出題と類似、右図は2022年 東京大学英語[前期]2-[A]の出題と類似

止められない旧七帝大入試問題のSDGs化

世界共通のゴールである、持続可能な開発目標(SDGs)に関連する出題は、大学入試だけでなく、中学入試や高校入試でもとりわけ増えている。中でも、旧七帝大の徹底ぶりには一驚せずにはいられない。下表は、2022年における旧七帝大の前期英語の「大問別のテーマ」を一覧にまとめたものだが、サマデイグループの独自の調べによると、なんと56.7%の大問が、SDGsに関連したテーマ設定であった。

SDGsこそ、正解のない問いの最たるものだが、そんな時代をリアルに生きる私たちにとっては、決して傍観することのできないテーマばかりだ。入試が人財のスカウト機能なのだとしたら、大学は、単なる「受験勉強の達人」よりも、世界を舞台に課題を設定し、自ら解決策を導くことに邁進できる「チャレンジの達人」と巡り会いたいはずだ。そんな大学の願いが、ひしひしと伝わってくる入試問題の進化は、これからますます加速していくことだろう。

2022年度 旧七帝⼤英語⼊試問題のTOPICとSDGsの視点(リスニング問題は除く)

※本記事は『月刊私塾界』2022年4月号からの転載です。

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