【私塾界9月号】ついに逆転。「一般選抜」が少数派になる中で主流となる「総合型選抜」の本質とは?

【私塾界9月号】ついに逆転。「一般選抜」が少数派になる中で主流となる「総合型選抜」の本質とは?

学習塾や予備校の経営者をメインターゲットとした情報誌『月刊私塾界』。
『月刊私塾界』では、全国の学習塾にとって有益になる情報を、「塾・企業」「教育ICT」「地域教育」「受験」といったテーマにて、数多く紹介しています。

『月刊私塾界』で紹介される情報は多岐にわたり、それらは学習塾や予備校の経営者だけに限らず、教員、EdTech企業、教育委員会など、教育業界に携わる者なら誰にとっても役立つものです。
EducationTomorrowでは、今回から月刊私塾界に掲載された注目すべきニュース・トピックを、転載します。


【私塾界9月号】ついに逆転。「一般選抜」が少数派になる中で主流となる「総合型選抜」の本質とは?

2022年8月15日、日経新聞の朝刊一面に「偏差値時代・終幕の足音」と題した最新の入試動向が掲載されました。そこにも記されていたように、2021年度の入試から、総合型選抜(旧AO入試)と学校推薦型選抜による入学者が全体の50・3%となり、いよいよ「一般選抜」と「総合型選抜」の入学者比率が逆転したのです。これは、正解ありきの一般入試で「偏差値序列」を競い合う世界観に、大きな終止符が打たれたことを意味しています。一方で、この流れを受け、総合型選抜・学校推薦型選抜の具体的な対策法にも注目が集まるようになり、大人の手が入った「作られた提出書類」では、大学と受験生との真のマッチングが実現できないことも認識されはじめました。そこで、本記事では、多くの教場で議論になっている「人物を多面的に評価する新時代入試にどのように立ち向かったらよいのか?」というテーマに対して、過去15万人を超える年内入試の合格指導実績を持つサマデイグループ(本社:東京都千代田区・相川秀希CEO[日本アクティブラーニング協会理事長])が、ひとつの重要見解を示します(文責:日本アクティブラーニング協会)。

総合型選抜指導の鍵を握る「ポートフォリオ創造」

海外の大学でよく使われる「Holistic Approach(ホリスティックアプローチ)」という考え方は、これからの日本の大学入試をイメージする上で非常に参考になる。これは、入学審査のプロセスで、一面的な過去の成績だけではなく、「エッセイ」「推薦状」「面接」といった多様な切り口から、受験生の「資質」や「思想」なども含めた多面性を評価するという考え方だ。日本の「総合型選抜」における「総合」の英訳には、まさにこの「Holistic」という言葉が最適だろう。

現在、日本の大学でも入試のバリエーションはかなり増えてきた。それは、大学が受験生の個性を引き出すために創意工夫を凝らした結果とも言えるが、わかりやすく「総合型選抜」を通じて受験生に課される提出書類を大別するならば、次の5つが挙げられる(【図1】参照)。

【図1】[総合型選抜で課される5つの基本提出書類]

さて、ここで読者の皆さんに考えていただきたいのは、もしもご自身が、総合型選抜の指導をする立場だとしたら、まず、前述の《1》〜《5》の、どの項目から指導をスタートするだろうか、ということだ。

サマデイグループが実施する総合型選抜の「指導者研修」の中で、これと同様の質問を投げかけ挙手を募ると、《4》の「志望理由書」に手を挙げる方が非常に多い。しかし、実際の我々の指導の中では、すぐに志望理由書に飛びつくようなアプローチは決して行わない。

では、どのようなアプローチから受験生との対話をスタートさせるのか。それは、《3》のポートフォリオだ。たとえ、受験する大学が出願書類としてポートフォリオを求めていなかったとしても、まずはポートフォリオを手がけるところから、合格の物語は始まる。

ポートフォリオ創造のプロセスには、自分自身を棚卸し、自分固有の経験の中にどのような価値観や意識が表出しているのかをメタで認識するという極めて重要な効果がある。この「経験値のトータルスキャニング」によって炙り出されたことが、自分自身の「Holistic」な価値を自己認識する原点となる(【図2】参照)。

【図2】[受験生の多様性を引き出す指導の流れ]

学びの履歴から「独自の価値観」を見出す力

ここまでお読みいただいた読者の中には、「ポートフォリオ」という言葉に、なんとなくの違和感を感じる方もいらっしゃるだろう。というのも、数年前に「高大接続改革」の切り札として「eポートフォリオ」の構想が打ち出された時、前述のようなポートフォリオの本義が、あらぬ誤解とともに流布されてしまったことが否めないからだ。

当時は、デジタル調査書の延長のような感覚で、「作業的に活動経歴を溜める」ということに価値が置かれたため、渦中の学生や保護者はとにかく混乱したようだ。その混乱の中身は、我々サマデイグループの公式サイトにある「問い合わせフォーム」に届いた、当時の質問を見れば明らかだ。

どの質問をとっても、悩みの種類は一緒で、活動履歴の価値に序列をつける発想から抜け出せていない。ハーバードビジネススクールの看板教授だったクレイトン・クリステンセン教授は、「人生を測るものさし(how to measure your life)」について「あなたが何をしたかではなく、あなたが出会った人との関係の中にある」という言葉を残しているが、本来のポートフォリオの意義は、まさにこの言葉通りだ。

目に見える活動の優劣ではなく、活動を通じて、①どのような出会いをしたのか、②どのような知的成長を感じたのか、③どのような思考の次元転換があったのかという、受験生独自の視点や価値観に、大学は触れたいと思っている。たとえ、バスケ部の「県大会出場」どまりであっても、その経験の中にどのような出会いがあり、どんな意義を見出したのかを本人の言葉で語れたら、それは大学が最も聞きたい話であり、もはや「全国大会出場」と比較することすらナンセンスなのだ。

このように、ポートフォリオをベースに、自分自身の学びの履歴の中から「独自の価値観」を見出す力が、これからの入試では極めて重要だ。我々はこの力のことを「ポートフォリオ力」と呼んでいる。

ポートフォリオ力を鍛えて、筑波大学に現役合格!

実は、この「ポートフォリオ力」を鍛えるトレーニングを日常的に行い、見事現役合格を勝ち取った事例が、これまで我々のもとに、いくつも報告されている。本誌でも度々ご紹介してきた「SDGsカリキュラム」は、正解のない課題に挑戦するトレーニングメソッドだが、この「SDGsカリキュラム」の学びの履歴から、独自の価値観を見出し、直接的に合格に結びついた事例をここではご紹介する。

まずは、【図3】の円盤型教材を見てほしい。瓶の中のマムシと対話するという、極めて特異な状況下で物事を思考する問題だが、読者の皆さんだったら、どのような解答を作り上げるだろうか。

【図3】[実際の円盤型教材]

ある塾でこのSDGs カリキュラムを実際に解いたAさんは、掲載した【図4】のような解答を作り上げたのだが、この解答をもとにのちに母親と交わした何気ない対話から、Aさんは自分自身の現役合格を決定づける研究テーマを見出すことになる。その本人と母親との対話を、特別にAさんに再現してもらった。

【図4】[Aさんの実際の解答]

「対話」による進路発見が総合型選抜の鍵

いかがだろうか。Aさんは、このように自分で出した解答から、自分自身を再認識している。そして、最終的に、筑波大学生物学類に総合型選抜で、現役合格を果たした。ちなみに、Aさんが大学に提出した「志望理由書」のテーマは「ヘビの毒素成分を解析すれば、認知症予防に役に立つ薬や化合物の生成に役立てられるのではないか」という仮説の立証についてだった。まさに、このSDGsカリキュラムを通じた学びの履歴(ポートフォリオ)を原点に、大学での具体的な研究テーマを見出したというわけだ。

最後に、このAさんの事例で忘れてはならない重要なポイントを一つ確認しておこう。それは、母親との絆をベースにした「対話による気づき(メンタリング)※」が、極めて効果的にAさんの思考を深めているという点だ。母親から子に教え諭すわけでもなく、子から母親に一方的に解答を共有するわけでもなく、極めて自然なやりとりがでなされているからこそ、対話による新たなステージが浮かび上がっている。誰も正解を持っていないこのSDGsの時代に、「教える⇄教えられる」というコミュニケーションだけでは、新発想は生まれない。

筆者自身も経験があるが、人は「受験」を通じて様々な自己発見と自己成長をする。つまり、受験は「未来を牽引する人財を育成する場」そのものなのだから、変わりゆく時代に、受験のあり方が様変わりするのは当然のことだ。だからこそ、新しい受験観の中で大切にしたいのは、合格だけを目的とした一時(いっとき)モノの特効薬を求めることではなく、受験生の本質を導き出す一生(いっしょう)モノの対話環境を実現することなのだ。

※メンタリング:メンタリングとは、人の育成法のひとつで、指示や命令によらず、メンター(Mentor)と呼ばれる指導者が、対話と助言による気づきによって、被育成者たるメンティー(Mentee)本人と関係をむすび、自発的・自律的な発達を促す方法のことを指す。サマデイグループでは、過去の指導実績をもとにメンタリングの重要スキルを体系化し、2018年には文科省の委託事業として、メンタリングにおける研究成果を実証する「メンタリング研究会」を実践している。


※本記事は『月刊私塾界』2022年9月号からの転載です。

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